148試合目 地獄の発券

 あれから2日後の今日、俺は紫と少し高い焼肉屋に来ていた。

 それもこれも全部あの券だ。

 紫と焼肉に行くのはいいとして、全部おれの奢りというのがえぐみを出していた。

「やっぱ僕も払うよ??」

 というのも紫は一緒に焼肉を食べたいとしか言ってなかったのだが、春馬が作った場の流れでおれが全部払うという券に変わっていた。

「いや、大丈夫だ」

 とはいえ、ここで紫に払わせるわけにもいかない。それでは紫へのメリットは薄くなってしまう。それに、ここでなんだか割り勘にするとなんでかはわからないが、おれが納得できない。

「そう? 厳しくなったらいってね!!」

 マジで優しい。この優しさが非常に沁みる。結婚したいくらいだ。

「ありがとう。でも大丈夫だ。今日はたんまり食ってくれ」

 こう言うしかねえじゃねえか!!チキショウ!!

「ありがとう……。本当に今日はとても幸せだなあ」

 見ろよこの笑顔。守るしかねえだろ!!!


 こうして焼肉はスタートした。さすがに悪いと肉焼きをしてくれる紫、最高だ。

「どう?? 美味しい??」

「そりゃもちろん。紫が焼いてくれたんだから」

 それを聞いて“そう”と一言言って顔を赤らめた。


 それからさらに食事は進み中盤となったところだろうか。紫はおれに一つ尋ねた。

「一つ聞きたいんだけど、徹君はさ。高校卒業したらどうするの??」

「そりゃ大学行くだろ?? ってか前にそれ言わなかったか??」

 当たり前だろと思いながらも頭にはてなを浮かべる徹に紫は訂正をする。

「あ! 違う違う。彼女……とかは作るの??」

 モジモジしながら聞いてくるその姿はすごく可愛い。じゃなくて

「そうだなぁ。そりゃいつかはって思うけど、今は受験に集中しててそんなこと考えている暇なんかないなぁ……」

「そっか」 

 少し残念そうな紫を横目に徹は気づかないふりをする。

「紫はどうなんだよ」

「僕はもちろん徹君を諦めてないよ?? 返事も今はストップしてるしね!」

「確かに。ただあの春馬たちのいちゃいちゃを見てるとなかなか恋愛ができる気がしないな」

「そう? 僕は羨ましいなあって思うけどね」

 紫が今日はぐいぐいとくるではないか。何か心に変化でもあったのだろうか。

「そうなのか?」

 俺はシンプルな疑問をそのままぶつけた。

「そうだとも、めっちゃあんなにラブラブドキドキの生活を送れるなんて羨ましいよ」

「それは……俺としたいって……ことか?」

「......そうだね」

「そうだな。実は俺!!」

 チリリリリリ

 おれが一つ言おうとした時、電話がそれを遮った。

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