142試合目 バスケェ

 ということでチームが決まった。

 徹、紫VS春馬、彩花 になり、柚希は自ら審判を志願した。

「大丈夫か?? 審判で」

「まあ……。このチームの中に入ったら確実に殺されるのは間違いないので、私は審判で充分です」

 柚希は少し身を引いた。

「確かにそうだな。大事な妹が怪我でもしたら俺はすげえ悲しいしな」

「兄さん……!!」

「あの~~。僕はいいっていうのかい??」

 紫は顔を膨らませて俺の方に近寄ってきた。

「紫は信頼しているから大丈夫だろ? 頼むよ」

「ふ、ふ~ん? そこまで信頼されちゃ、やるしかないね!!!」

 上手いこと気が乗ってくれてよかった。うん……。

(しかしまずいな……。春馬のスイッチが完全にオンだ。俺死なねえかな?)

 春馬は大きく周りを巻き込むような呼吸を一定間隔で鋭くしていく。顔は本気だ。春馬は本気の顔になるとマジで獣みたいになる。ハンターの気持ちだ。


 このゲームのルールは簡単。3on3ならぬ2on2だ。つまり2対2でやるバスケってことだ。説明以上。始めよう。


 ボールをはじめにとったのは西屋敷だ。

「よし!!!」 

 西屋敷はドリブルをしながら相手のゴール付近まで近づこうとしていた。が……

「ぅふうぅぅう!!!!」

 前傾姿勢の春馬がそのボールを横から奪い取り、足首を回し真反対を向く。そしてその位置から一歩も動かずに3ポイントを決めた。

「っはあ!??」

 西屋敷はあまりの出来事に唖然とする。

「よし」

 春馬はそれだけ言って元の位置に戻る。

「ごめん、徹君。カバーできなかった」

「大丈夫、それが普通だ。しかし少し甘く見てたかもしれねぇなこりゃ」


 時間の都合上1クォーターだけの試合になる。つまり10分、突き放されれば終わりだ。その中での三点のでかさは精神的に相手を痛めつける。

「くそが……楽しくなってきたな」

 西屋敷は少しにやりとほほ笑んだ。

「徹君……。いいね、僕も本気でやるよ」

 紫は長い髪をゴムでまとめて目を光らせた。


 忘れてはいけない。西屋敷も紫も春馬と戦えるくらいには運動神経がいいのだ。だから一年で最強の彩花が空気と完全に化している。

(す、すごい……!! 先輩たちの本気だ……。これは僕も頑張んなきゃ!!!)

 彩花も気合はばっちしのようだ。

「彩花ちゃん。気を付けた方がいいよ?」

「え??」

 その時彩花は自分の周りで何が起こったか全くわからなかった。

 ただわかったのは点を取られた、ということだ。

 しかし春馬には見えていた。

「すごいな……」

 瞳に映ったのは紫と徹が呼吸を合わせてそちらのボールに目が行く前にありとあらゆる方法で相方にパスをしてゴールまで向かう方法。

 あえて名前を付けるなら【稲妻の贈物ライトニングギフト】だ。

「「よし」」

 二人は呼吸をそろえハイタッチをした。

 現在の得点

 2-3

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