73試合目 入部

 なぜかよくわからない理由でボランティア部に入ることになった俺たちはとりあえず放課後、指定の教室に集まった。

「しかしまたなんでボランティア部を新設したのか……」

 俺は少し疑問だった。ボランティアって委員会とかではないのか?? 部活として成り立つものなのだろうか……。

「それは同感ね。私も春馬君以外に奉仕なんて考えられないわ……」

 久しぶりにさくらの声を聴いた気がする。さすが“元”メインヒロイン

「ねえ西屋敷。今私に対して失礼なこと考えたでしょ?」

「いや??? まさか」

 こいつにまで心を読まれるわけにはいかん!!!

「しかし兄さん……。ボランティア部って何をする部活なんでしょうか」

 そう言いながら教室の扉を開くとそこには長い机が一個と椅子がたくさん並んでいた。たとえるなら会議室のようだった。

「おお!! すごいよ!!! かっこいい!!!」

「こら、はしゃぐな春馬。」

 春馬が走り回ろうとしたので襟を引っ張って止めた。

 いろいろ疑問が頭に出ながらもとりあえず全員椅子に座った。するとガラララっという音と共に教室の扉が開いた。

「今日からボランティア部の顧問を~務めます。はあ……。片浦 洸 かたうら ひかりです……。よろしく」

 ヒールをはいていてもわかるほどに高身長でスタイルもいい美人、かつ眼鏡をかけ知的な印象を与える彼女だったが……

(明らかに無理やり押し付けられた感あるなぁ……)

「はいはいはい!!!!」

 春馬は重い空気をはねのけるように手を挙げた

「どうしましたか?? 磯貝くん。『先生! 付き合っている人いるんですか!』とか『結婚してるんですか!』とかリア充でしか物事を判断できない糞みたいな質問だったらあなたに社会の重圧と実家からくる結婚の焦りの辛さを身で体感してもらいます」

(こっわ)

「先生は何で顧問になったんですか??」

「はあ……。社会ってなりたくてなるってのはほとんどないんですよ? 妥協して苦しんで、上でのうのうと暮らしてる人間を見て下唇を噛む……。これが社会です。つまりその質問に対する回答は『察せよ。バカが」です」

 この先生なんとなくわかってはいたが、無理やりやらされているな……。

「先生。ボランティア部は何をする部活なんでしょうか?」

 俺は一番気になっていることだった質問をした

「そうですね、君のように効率の良い質問は先生助かります。活動内容は一週間に一度の地域貢献、さらには学校の問題を助ける。あとは生徒会の仕事の手伝い等々……。まあ行ってしまえば“とりあえず学校の印象上げる係、学校が困ったときには雑用係にしちまえばええやん”っていう汚い大人の汚い戦略活動の部活ってわけだ……」

 誰がこんな説明でやりたいっていうんだよ……。

「すっげ!!! 楽しそう!!!」

  あ、いたわ……春馬バカ

 

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