70試合目 二人きり

 夕食を何とか食べ終え、春馬は家に帰った。

 鈴は『泊まる』などと馬鹿な事をほざいていたので却下した。その結果鈴は帰ることになった。

 そして今は鈴を駅まで送っている。ついでに凛も一緒だ。

「今日は疲れたが、楽しくもあったよ。ありがとう」

 一応お礼を言うのは大事だ。もちろん社交辞令などではなく。本音だ。

「おう! そんなにデレるなら毎日行ってイチャイチャしてやるよ!」

「毎日も嫌だし、イチャイチャすんのも柚希に殺されるからやめてくれ」

「照れんなよ!」 

 鈴は俺の背中を力強くバシン! という音とともに叩いた。

「いて! 照れてねえよ」

「ははは! てか見送りここまででいいよ」

「そうか?? 気を付けて帰れよ?」

「うん! ありがとう! 愛してる!!」

「そんなに簡単に言うな!」

 そういうと鈴は去っていった。さて……

「凛は帰らないのか??」

「とおくんともっと一緒にいたい」

 二人きりになるとこのモードが発動するのか。

「それは嬉しいが俺も早く家で休みたいんだか……」

「じゃあ私も家に泊まる」

「ダメだって言ってんだろ」

「むう……」

 融通が通らなかった子供みたいな反応を凛はとった。あのクールビューティな生徒会長はいったいどこに行ったのか。

「甘えても無駄だ。ダメなもんはダメ」

「とおくんの意地悪……。でもそれがいい……」

 なんで俺が悪いみたいになってるんだよ。あと性癖出すな。

「ってかどうせ明日も会うだろうが」

「明日も会ってくれるの??」

 凛はその一言に目を光らせた。

「ま、まあ……、生徒会が忙しくなければな?」

「わかった! 忙しくてもすぐに会いに行く!!!」

「それは仕事優先してくれ……」

 こいつの場合冗談とかじゃなくて本気でやるやつだからな。ここで釘を打っとかないとな。

「それよりとおくんは彼女とか……いるの??」

「いたら女子を家に上げたりしないだろ。普通」

「じゃ、じゃあさ。私とよ」

「は、はあ???! なんでいきなり」

「いきなりじゃないよ。ずっと好きって言ってるもん……。ダメ??」

 上目づかいで俺のほうを見てくる凛の姿に少しドキッとしてしまった。

 しかしこいつのほしい答えはなんとなくわかってる……。

「ダメだ。ドMのお前じゃ付き合えない」

 一瞬ひどい言葉のように思えて、俺も言い方あるだろ!? と一瞬考えるがこれでいい。なぜなら……。

「はあ……はあ……。そんな辛辣な徹が好き! 大好きぃぃぃ!!!」

 こいつはド変態だからである。


女子に好かれるのは飛び跳ねるほど嬉しいが、なんでこんな偏りがあるのだろうか。と常々思う徹であった。

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