59試合目 背後に忍び寄る淫魔

「なあ西屋敷」

「なんだ。春馬」

「その後ろのはなに? 」

 俺の後ろには今にも弁当に媚薬を盛りそうな鈴がいた。

「聞くな。こいつがいるせいで弁当も食えやしない」

「徹~。なんでそんなに媚薬これ飲みたくないの? 」

 どんどん鈴の息遣いが荒くなっている。

「当たり前だろ! 学校で媚薬飲む馬鹿がいるか」

「学校以外ならいいってわけね」

 揚げ足取り子討伐クエストを受注したい今日この頃……

「大体な、最近アプローチが露骨すぎるんだよ」

「だって、振り向いてほしいんだもん♪」

 だもん♪で許されるようなかわいいもんじゃないだよな……

「例えばだ、それを俺が飲んだらお前は何をするつもりなんだ」

「え~そんなにひどいことはしないよ?? まず襲って……」

「ストップううう!!! 最初からアウトですけど?? 恋のCから始めようと支店の」

 俺たちの会話を聞いていた春馬は純粋に質問をする。

「ねえ西屋敷、媚薬って何??」

「媚薬って言うのはだな……ってげっ!」

 媚薬についての説明をしようとしたとき、春馬の後ろにいた春馬大好きクリーチャー:さくらが俺をにらみつけてきた。

 (あれは余計なことを教えんな? って顔だな……)

「媚薬って言うのは???」

「悪いがまた今度教える……」

「???」

 悪い春馬。それを教えたら俺が絞め殺されちまう。

「っていうか徹って好きな人いるの?」

「はあ!??」

 急な質問に思わず俺は大きな声を出してしまった。

「なんで急にその質問なんだよ!」

「いやだって、こんなにかわいい私に振り向かないとか男が好きか、ほかに好きな女がいるかのどっちかじゃない??」

 いや自分でカワイイって言うかね……。

「西屋敷の好きな人知ってる!!!あのね……もごもご」

 春馬が口を開こうとした瞬間に俺は春馬の口を手で押さえた。

「ちょっと黙ろうか???」

「なになに!? 徹好きな人いたの!!!???」

「昔の話だよ、今じゃない」

「昔ってどのくらい前?」

 鈴は前のめりになりながら質問をした。

「小学生ぐらいの時だよ」

「な~んだ、小学生か。今はその子のこと好きじゃないんだ?」

「……見てない。」

「何その変な間!? 本当は好きなんだ! 私というものがありながら!!」

 いつてめえと付き合ったよ?

「何言ってんだ。今は話すこともないぐらいの関係だ」

「ほんと~??」

「本当だ。小学生の時に引っ越していなくなったからな」

「そうなんだ? 名前はなんていうの」

「え~っと確か“凛”だったかな」

「へえ……。うちの生徒会長と同じ名前なんだ??」

へ???

 


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