『冬はコタツでみかんだよね』の章

第49話

「結婚、誰と誰が?」


素っ頓狂な声を上げたのは和泉さん。


「アタシと本庄猪丸がだ」


そっぽを向いて答えたのは綱子ちゃん。


「何時の話ですか?」


冷静に聞いてるのは餅子ちゃん。


「年明けすぐに籍を入れる」


なんと、ビックリ。

驚きの展開である。

そんなコト全く知らなかった和泉さん。


「スゴーイ、綱子ちゃん」

「餅子から聞いてな。

 結婚するとよ、一週間も休暇貰えるんだってよ」


特別休暇。

慶弔休という制度。

和泉さんの会社だと一週間も休めちゃう。

その間にハネムーンやら新居への引っ越し済ませてね。

そういう仕組み。

なんだか休暇の為に結婚するような言い方の綱子ちゃん。


「年末年始の休みにくっつけるからよ。

 年明け、ずっと会社出て来ないからよろしくな」

「休む前にちゃんと休暇届出してくださいよ、綱子さん」


「固いコト言うなよ」

「固く無いです。

 ホントに早く出さなかったら、無断欠勤扱いにしますからね」


餅子ちゃんは本気のツッコミ。

和泉さんは興味シンシン。


「結婚式はどうするの?」

「やらねー。

 恥ずかしいだろ」


「ええーっ、ダメだよ」

「ウソだよ。

 ハネムーン先のハワイで二人だけでやる」


ハネムーン先で二人だけの結婚式。

しかも海外。

おおーっ、ろまんちっく。


「凄いですね。

 けっこうなお金がかかるんじゃないですか」


現実的なコトを言い出したのは餅子ちゃん。


「まぁな。

 オレは軽いキモチで言ったら、本庄がそれで良いってよ」


綱子ちゃんはそっぽを向く。


和泉さんは、綱子ちゃん照れてる? などとニマニマ。


綱子ちゃんから見ると。

餅子ちゃんが目で問いただしてくるのだ。


あれー、本条さん和泉先輩に興味が有ったような。

どういう展開ですか?

どういうもこういうも無い。


本庄猪丸と言う男。

綱子ちゃんは彼の家に押し掛けて問い詰めた。


おいっ、本当にアタシの身体に何もしてねーだろうな。

テメェ、本当に酔っぱらってたのか。


なんだか本庄は顔を赤らめた。


「実は僕は気の強い女の人が好みなんだ。

 口説くんじゃ無くて口説かれるのが好きなんだ」


和泉が怒鳴ってるのを見た事が有って。

それで本庄は和泉が気になっていたらしい。


だけど今日直江綱子に詰め寄って来られて。

それ以上に気に入ってしまったらしい。


普段会社では俺と言っている本庄。

何故か一人称まで僕に変っている。


綱子さん、アナタは僕の女王様だ。


なんだか怪しげなコトを言ってくる本庄猪丸である。

だけど綱子ちゃんはなんとなく絆されてしまった。


変なヤツではあるが。

本庄は外見はまぁまぁイイ男だ。

出世頭だし、収入もそれなり。

そう考えるとなかなかの相手なんじゃ無いのか。


それに僕と言って綱子ちゃんをウルウル見上げる本庄はカワイイ。

割とカワイイと思ってしまったのだ。


「まぁな。

 オレの言う事なら何でも聞くって言うからな。

 そこまで言うなら、結婚してやらないでも無いぜ。

 ってそんなカンジよ」


和泉さんや餅子ちゃんにはそんな風に言う綱子ちゃんである。

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