第34話
「今温め直します」
六郎さんが晩ごはんを温めてくれる。
六郎さんはもう食べてしまったらしい。
和泉さんが遅くなる時もいつも待っていてくれた六郎さんなのだけれど。
今日は輝子ちゃんがいる。
時計を見ればもう20時過ぎている。
さすがに輝子ちゃんを待たせる訳にいかない。
トーゼンだよね。
そう、トーゼンなのだけど少し淋しい気がしてしまう和泉さんだ。
「どうぞ」
今日のご飯はグラタン、きのことチーズが贅沢に入ってる。
さらにサラダ、サラダは柿が入ってる。
たくさん採れた柿の実、色んな使い方しないと。
美味しい~。
食べる和泉さんを見つめる六郎さん。
何故か横に立ってる。
「どうしたんですか?
座ってください」
正面の席を指す和泉さん。
六郎さんは食事は済ませたはずだけど、一緒にお茶は飲むつもり。
正面にお茶は用意してある。
何故か動かない六郎さん。
なんだか以心伝心。
六郎さんの考えてる事が伝わって来ちゃう。
正面の席に行ったら、お互いの顔は良く見えるけど。
机を挟んで距離は離れちゃう。
お互いの体を近づけるなんて出来ない。
そう、今ちょうど六郎さんが和泉さんに近付いてるみたいに。
和泉さんの肩に手を置くなんてマネできない。
そして顔を近づけるなんてコトも出来ないのだ。
気が付くと六郎さんの顔がすぐ近くに有る。
和泉さんだって六郎さんの方に自分の顔を向ける。
そっと目を閉じたりなんかして・・・
「すいません。
ポットは何処でしょう?
お茶を入れたいのですが・・・」
訊ねたのは輝子ちゃん。
二階で勉強してたハズなのだけど。
いつの間にか降りて来た。
和泉さんは慌ててグラタンを自分の口に放り込む。
「アツツツッ。
グラタン熱々だね。
舌やけどしちゃったかも」
六郎さんはすぐさまキッチンへ。
「ああ、ポットならこれですよ。
輝子さん、紅茶ですか日本茶ですか。
私が煎れて持って行きますよ」
「お茶くらいは自分でやります」
「何処に茶葉が有るかも分からないでしょう。
余計な気を回すより、勉強に集中した方が良い。
明日は模試なんでしょう」
「すいません、お言葉に甘えます
ではほうじ茶が貰えると嬉しいです」
「ほうじ茶かー、輝子ちゃんシブイね」
「コーヒーは飲み過ぎると、お腹が痛くなるので」
和泉さんは輝子ちゃんと話をしながら考える。
さっき、あたし何しようとしてた。
あたしと六郎さん。
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