第14話

綱子ちゃんはお手洗い。

何故か和泉さんは待ちぼうけ。


案内して戻ろうと思ったのだけど。


「なんだよこの廊下。

 怖いじゃない。

 和泉帰っちゃヤダ、独りにしないでよ」


長尾家は日本家屋。

木造で廊下の隅は暗い。

趣の有る造りと現在では思ってるのだけど。

そういえば棲み始めたばかりの頃はアタシも恐かったりしたなー。


おトイレの中は数年前にはリフォーム。

ウォシュレットも付いてる。

けど、居間までの通路は明かりも弱く、大きいガラス戸からは庭が見えてる。

木や草花が立ち並ぶ庭。

明るい時見ればそれなりの光景なのだけど。

夜、しかもこんな雷も光っちゃうような雨の日はブキミに見えちゃう。


お手洗いから出て来た綱子ちゃんは照れ隠しか。

矢継ぎ早に喋る。


「和泉、アンタあの男とは何時結婚するの。

 実はアタシたちの知らないうちに籍入れてるなんてことは無いわよね」


ケッコン?

セキ?

席。

咳。

ケッコンって血痕。

なんちゃって。


「なに、そのトボケた顔。

 子供はどうすんの?

 まあ色んな人居るし、

 子供は作らないって人も居るから良いけど。

 考えだけでも聞かせなさいよ」


ケッコンて結婚。

誰と誰が?

結婚……って何だっけ?




餅子ちゃんはワインを開ける。

なんか酒でも呑まなきゃやってらんねーや。

ついでに六郎さんのお猪口にも日本酒を注ぐ。


目の前の男性はいまだに和泉さんが如何に素敵か語っている。

この人顔は赤くなってないけど、実はマジ酔いしてるんじゃ。


和泉さんと綱子さんが戻ってきてくれた。

六郎さんはさすがに和泉さんの事を語るのはストップ。


「じゃあ私はこの辺で。

 後で酔い覚ましにお茶でもお持ちしましょうか」

「大丈夫です。

 六郎さん、私がやります」


何故か答える和泉さんの顔は赤くなってる。

酔いが回ったのか。


「冷蔵庫にアイスが有ります。

 デザートです。後で食べてください」


アイス。

更には買って来たケーキも有るのだ。

どっちを食べるのが正解なの?。

和泉さんは難問に頭を悩ます。

たった一つの冴えた回答。

それは。

両方食べちゃう。


餅子ちゃんはお酒と甘いものの組み合わせOKの人。

チョコをつまみにワイン飲んじゃう。

アイスクリームにカクテル注いで食べるのも良い。

綱子ちゃんはつまみは辛い物派。

ビールにスイーツは似合わない。

だけど、夏だしな。


顔がパァっと輝く三人。


「和泉、さっきの続き。

 お前ももうアラサーなんだし。

 考え聞かせろよ」


アラサー? 誰が?


「まだ30歳になる迄一年半あるよ」


否定する和泉さん。


「うん? もしかして和泉さん。

 アラサーって30代の事だと思ってません?」

「違うぞ、アラウンド・サーティー。

 25歳以上、34歳までがアラサーだ」


「綱子さん、それ大きく取り過ぎ。

 一般的には28歳から32歳位迄ですよ」


ええっ。

30歳になったらじゃ無かったの。

驚きの和泉さん。

25越えたらアラサーって言ったりもする、とすると。

とっくの昔。

なんてこったい。

気付かないウチにとっくのとうだったのか。

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