『夏はビールとアイスクリーム?』の章

第9話

柿崎和泉さんは営業部の主任。

鬼柿崎なんて呼ばれたりもするけど。

自分では割と優しい人間だと思ってたりもする。

現在、和泉さんは部下の後輩と打ち合わせ中なのだ。


「金津、ここ数字ミスってる」

「あっ、すいません。柿崎主任」


「金津、最近単純ミス多いよ、気を付けて」

「き、気を付けます」


「うん」


和泉さんはチラっと笑って見せる。


部下のミスを注意するのってタイヘン。

キツク言い過ぎちゃいけない。

だからって放置するのも違う。


和泉さんはハッキリ指摘して、その後フォローするスタイル。

怒ってないよと意思表示。


昔は上司なら怒鳴り放題だったんだろうな。

今の世ではパワハラ。

そうもいかないのだ。


それに怒鳴り放題は和泉さんに向かない。

勢いで怒鳴っちゃう事は有る。

けど、その後落ち込む和泉さんなのだ。

怒鳴り放題なんてしてたら、毎日落ち込む事になる。

ああ、でも毎日六郎さんに泣きついちゃうから、それはそれでいいかも。


「和泉先輩、書類持ってきましたよ」

「ありがとー、餅子ちゃん」


餅子ちゃんがやってくる。

後輩の男性は離れてく。


ふーん。

餅子ちゃんから見ると。

和泉さんが男の子に笑いかけた。

それを見た男の子が目を輝かせてたのだ。


「和泉さん、アレ新平くんでしたっけ」


自分の席に戻っていく男の子。

頬まで赤らめてるな。

もうスーツも着た社会人。

男の子って言い方も何だけど、子って言い方が似合っちゃう雰囲気。


「そうだよ、金津新平くん」


和泉さんは部下が頬を赤らめてたなんて気付いてない雰囲気。

金津新平。

入社二年目の新人だな。

そっか。

覚えとこ。

そう思う餅子ちゃんだ。



和泉さんと綱子ちゃん、餅子ちゃんはランチを食べてる。

営業部の柿崎和泉、商品開発部の直江綱子、総務部の甘粕餅子。


商品開発部の隣の部屋。

本来の名称は小会議スペース。

来客が来た時の打ち合わせ室でもある。


休憩時間は女子の休憩スペースとなるのだ。

本当は女子のと決まってる訳では無いけれど。

実際女子しか使っていない。

女子しかいない部屋に男性社員が入ってくのは勇気がいる。


和泉さんたちはそこの常連。

だいたいいつもそこでランチ。


和泉さんは六郎さんが作ってくれたお弁当。

綱子ちゃんは出前、今日は親子丼らしい。

餅子ちゃんは買って来たサンドイッチ。


「和泉先輩、今日飲みに行きませんか?」

「アタシと餅子、和泉の三人プラス営業の男ども」


餅子ちゃんは和泉さんの二年後輩。

綱子ちゃんは同期だ。

今日は金曜日。

明日、明後日はお休み、やったね。

夏はビールの季節。

飲みに行きたがってる綱子ちゃん。

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