第7話

「フーン、じゃあ職場の雰囲気は良くなったんですね。

 それで、和泉さんは部長を許したんですか」


うーん。

許したって言うのはどうかな。

部長の気持ちは分かるけど。

それはそれとして、言い訳にはならないと思う。


でもまぁ、ちゃんと謝ってたし。

それに被害者のOLさん、可愛らしい先輩がもう気にしてませんと笑ってたのだ。

彼女がいいと言ってるモノを和泉さんがどうこう言うのは筋が違う気がする。


「わたし、もう怒鳴りつけちゃったし。

 これ以上口出しはしません」


「はい、和泉さんが納得してればいいんです。

 和泉さん、ケーキ食べますか。

 パウンドケーキ焼いてみたんです」


食べるに決まってる。

あっ、ハチミツ入ってる。

六郎さんの好みは甘さ控えめ。

なのにこれは甘く出来てる。


へへへへ。

アタシが疲れて帰ってきた時用の甘やかしケーキかな。



職場の空気はすごく良くなった。

みんな自由に話せる。

先日のヒトッコトも話せない場とは大違い。


問題があるとすれば、和泉さんが忙し過ぎる事くらい。


課長に言わせれば。

柿崎さん、部長に気に入られたんだと思うよ。


ホントウかな。

ドンドン仕事が降ってくるのだ。


大きいクライアントさん。

受注金額のケタも大きい。

その分、細かい注文も多い。


和泉さんは細かい注文を全て商品開発部に間違いなく伝えなきゃいけない。


商品開発部の綱子ちゃんは言う。

直江綱子。

和泉さんの同期のOLさんだ。

実は大学も一緒なので仲が良い。


「〇〇商事~?!

 確かに金払いはいいけど、注文がうるさくて有名なトコらしいよ。

 和泉、アンタイジメられてんじゃ無いの。

 その部長の仕返し」


綱子ちゃんは美人さんで頭も切れる。

和泉さんと同時に入社したのに、もう会社の人達の名前ほとんど覚えてる。

和泉さんが覚えてるのなんて、同じ部屋で仕事する営業の人だけだ。

会社のウワサ話をいつの間にか聞き込んで、和泉さんに教えてくれる綱子ちゃんだ。


イジメ?!

そんな事は無いと思うけどな。

課長には部長に気に入られてるって言われたし。


「じゃあ良いように使われてんのね。

 クライアントから文句が来たら新人のせいにして逃げる作戦」


綱子ちゃん、考え方が黒いよ。

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