洗脳されし者の救済・9
「あれれ!?ノーンさん、その杖···まさか!?」
「ええ、そのまさかですよ」
ノーンの持っている杖を見てモモが驚きの声をあげる。
「え?モモちゃん、あの杖そんなにすごいの?」
「あれは聖女専用装備の杖!もちろん品質は最上級よ!」
分からずモモに聞いたソラはとても驚く。それもそうだろう。教会関係の階級やシステムを理解している者は気づいてしまうのだから。
「せ、せせせ聖女様ァァァ!?!?」
「ふふ、私聖女になっちゃいました」
今度はノーンが後頭部に手を当てる。ソラはいつの時代でも、聖女という職業はPEOの世界で1人しか存在しないということに。
「私もいつか聖女になってみたいな〜」
「はっ!聖女の力があれば···ノーンさん!協力してくれる!?」
「私に出来ることならなんでもしますよ」
それから3人は、もう一度街をまわり、未だ洗脳が解けておらず破壊のままを繰り返している現地人に対し回復魔法をかけていく。
やはり2人の時よりも回復スピードが全然違う。それは単に人数が増えたからなのか、はたまた聖女の力が偉大であるためなのかは定かではない。
そうして、片っ端から現地人を発見し洗脳解除に成功した彼女たちは、戦闘が繰り広げられているであろう南地区の中心部に向かう。
「さすが聖女様だねー」
「スキルも進化してるっぽいよ!」
「っ!?」
戦闘音が次第に大きくなり戦場に近づいているのが分かる。そして彼女たちが炎上している街角を曲がると同時に、天高く舞い上がる鎖に巻かれた青い炎が。
「なにあれ!?ドクンドクンしてて気持ち悪い!」
「ノ、ノーンさん!何とかできませんか!?」
「最善を尽くします!“
ソラがノーンを期待の目で見る。モモやソラの魔法の威力では無理だと判断したのだろう。
ノーンが魔法を唱えると、キラキラした光が青い炎を蔽う。その神秘的なシーンはまるで赤子を抱く母のよう。
そのまま鎖が解かれ、天に昇る。浄化完了だ。
「おい、あれ掲示板で噂の聖女じゃないか?」
「た、確かに···じゃないとあの神々しさを説明できない」
何人かがノーンを見て言う。掲示板を知らない、現地人であるノーンは、不思議そうに振り返る。
「聖女様バンザーイ!聖女様バンザーイ!」
モモが両手を上げ下げし叫ぶ。あまりにも唐突だったため周りも困惑しているが、段々とモモの姿に感化され万歳コールが始まった。
「ちょっとモモさん!?止めて下さいよ!」
当然恥ずかしがるノーン。今や万歳コールは祝福者だけでなく、洗脳の解かれた現地人もしており、一体感が半端ない。
しかしそんな勝鬨の声はある者たちに遮られた。それは、結界を破壊した兎人と同じような形で。
「落ちてるのだぁぁぁぁ!!!!」
殆どの者が両手を上げたまま、声のした空を見上げる。絵面がシュールで非常に面白い。
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[ネジュ視点に切り替わります]
「···ター!···ないと···アルよ!」
···うん?声がする。ここは──水が沢山あるな。海だろうか?いや、息が可能ということは違うか。
「···ナーの···ットなのだ!」
さっきから聞こえる声が近いようで遠い。いや、遠いようで近いのか?全く分からない。
「やあネジュ様。こうして会うのは初めてですね」
「うお!?いや誰!?ここどこ!?お前もどこ!?」
「ああ、申し訳ございません。ここですよ」
いや、目を細めたら黒い靄がうっすら見えるくらいでハッキリとは見えない。てか何者?妙に親しげに接してくるんだが。
「なあ、お前は誰なんだ?」
さあ、返答やいかに。
「私ですか?あなたに手紙を送ったことがある者です」
手紙?俺いつ手紙なんて貰ったっけ?あー最初に貰っt···
「お前、まさか···生産神か?」
「その通りです。私は神の1柱である生産神です」
これはビックリだ。神と邂逅する日が来るなんて。
「生産神···様?ここはどこなんだ?···ですか?」
「様は必要ないですよ。敬語も不要です」
寛大な神でよかった。どこかの神はクズで人間を娯楽の道具として見ているもいるからな。PEOにもいるかもしれないけど。
「ここは簡単に言えば、ネジュ様の精神世界ですね」
なるほど?神界とかではないらしい。
「神が俺に何の用だ?あと様はやめてくれ」
「1つ言っておこうと思いましてね。次はタトロではなく、イクアラティに向かいなさい」
おお、マジで神のお告げだ。しかしイクアラティ?聞いたことないな。
「イクアラティとはなんぞや」
「宗教国家ですかね。ネジュ様は必ず行くべき場所です」
国家?ということはアパト王国以外にも国があるということか!あと様やめろって言ったよな!?なんかムズムズするわ。
少し生産神と情報交換すると、国は全部で4つあるらしい。
名前だけ言うと仙霊連邦・神聖王朝・深和帝国そしてアパト王国。
いつか全ての国に行ってみたい。特に仙霊連邦。ここはエルフや妖精種しか暮らしていないらしいからな。
「これからも頑張って下さい。見てますから」
ふーん、生産神は俺の行動を観察しているらしい。観られても減るものじゃないから気にしないぞ。
「ニャはははは!最高ニャ!」
意識が戻った瞬間、キーデの笑い声が聞こえた。
「何してるんだ?」
俺が声をかけると、シェ・キーデ・モウス・ポポが肩をびくつかせる。
「王よ、彼女らは王の寝顔を撮影し笑っておりました」
ギルカンテの忠実さが分かるな。恐らくシェが撮ったんだろう。これも別に減るものではないから、俺は気にしないけど。
「って待て!ヘルヘルは!?」
「安心せい。ネジュを守っておった騎士が倒したぞい」
「とってもすごい攻撃だったよ!」
ドロリが言うなら間違いない。そしてピョンピョン跳ねてるミミがかわいすぎる件。頭をよしよししたくなる。あ、ミュイに睨まれた。
「ネジュさん、私たちを助けて下さりありがとうございました」
「いやいや!領主様ともあろう人が簡単に頭を下げるなよ!」
めちゃめちゃ深々とお辞儀してたぞ!?恥ずかしいからやめて!?
「なにかお礼がしたいのですが···」
「レイモンド、その話はあとじゃ」
お礼なんて受け取れねぇよ!イベントの討伐報酬で満足だから!
「ママー!早くお洋服買ってよ!」
「いいわよ♡ けどとりあえず外に出なきゃいけないわね」
「それなら儂の魔法でどうにかなるはずじゃ」
あーギルマスをテレポートさせた消費MPが激しそうな魔法か。
ドロリの魔法で一気に全員をテレポートすることが可能らしい。だからなるべく固まって魔法を唱えてもらった。
「“テレポート”あ、座標みs」
え!?ちょっと待てや!おいィィィ!!じじいィィィ!!
「うわ!たっか!なんてところに座標設定してやがんだよ!!」
「オーナー!下から何か飛んでくるニャ!」
今度は何事!?あ、これは俺たち死んだか?
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