洗脳されし者の救済・5




少女が2人に、お姉さんっぽい人が1人。でも呼び方がママ?


「アオイちゃんアカネちゃん、頑張って♡」


「がんばる」「ママ見ててね!」


青髪の方がアオイ、赤髪の方がアカネね。身長が120cmくらいしかないけど、リアルだと小学生なのだろうか。


「ミュイさん!私たちに戦場なんて場違いだよ!?」


ん?また1人やって来た。今度も少女だな。を持ってるわ。


「大丈夫よ。私たちはあそこに向かいましょ」


ママと呼ばれていたミュイと言う女性は、さも当然かのようにギルカンテの後ろ、つまり俺の後ろにやって来た。


「おい、どういうつもりだ?」


は、話すの怖いけど勇気を振り絞って声をかけてみる。


「この子、何でも守ってくれそうじゃない?だから···ね?」


「何が、だから···ね?じゃい!自己防衛しろや!」


なんでここ来んの!?ちゃっかり、ぬいぐるみ持った子も来てるし!


「や、やっぱりダメだよぉ···」


ぬいぐるみを持ったミミが泣きそうになりながら訴えてくる。ちょ、その言い方だと俺が悪いみたいになっちゃいますよ!?


「王よ、我が僅か3人も守れないとでもお思いで?」


うっ、さっきまで3人以上守ってたから言葉に重みがあるな。王は寛大な心を持ってるからな。あー俺って超優しい。


「きゃぁぁ!アオイちゃんアカネちゃん頑張って♡」


ギルカンテの後ろから顔を覗かせ言う。なんか最後♡付いてなかった?


「ロンたちはなぜ洗脳されてたのかしら?」


ポポがロンに聞く。俺も気になったわ。


「洗脳状態の記憶がないから分からない。だが、意識が戻ってきたのは、状況が生と死の境目になってからだ」


···それってシステム的にそうなってんだろうな。死なせないために。


だが、ギルカンテの【魔法無効】というイレギュラーが存在したため、ヘルヘルというこれまたイレギュラーが現れてしまった。というところか?


そしてヘルヘルによって洗脳を解かれるという、恐らく運営も予想していなかったであろう事態に陥っていると。


まあ、こっちの方がシステムに縛られてない感があっていいがな。


「ふむ、集まっていたらすぐ終わりますよ?“ヘルバレット”」


ヘルヘルが放った、青い炎の弾によりシェたちの距離が離される。


「儂は支援に徹しようかのぉ“エデンヒーレスト”」


瞬間、緑色のフィールドが形成された。範囲が広く、回復効果付きだ。


「“奇襲”ニャ! 」「“細切り”」


キーデとアオイがヘルヘルに切り込む。アオイはスピードタイプか。


「私も攻撃するのだ!“カラリト”」


少し前に、ドロリの氷魔法を見ているから、しょぼく見えるが【水魔法】から進化させてやがる!俺もいつか【氷魔法】使いたい!


え?理由?氷像とかも作ってみたいじゃん!


「わ、私も支援頑張る!“サポート・ガール”!」


後ろから声がしたため、振り返るとミミが、女の子のぬいぐるみフリフリしている。


「ふわぁ!?バフがかかってるわ!」


「お姉ちゃん!頑張って!!」


いい子や。ミミちゃんいい子や。ポポにバフをかけてあげたんだな。


キーデとアオイの攻撃は防がれたが、モウスの攻撃はヒットした。


そのすぐあとに、シェ・レイモンド・アカネもヘルヘルに斬り掛かる。


「“鬼斬きざん”」「“カットラッシュ”」


「“春雲秋雲しゅんうんしゅううん”」


惜しい!シェとアカネの攻撃も防がれてしまった。しかし、ワンテンポ遅れて攻撃したレイモンドの強そうな攻撃が当たる。


「ロン、何処に行くんじゃ?」


「俺は地上に戻る。何かヤバい匂いがぷんぷんするんだ」


へー、戻るのか。本当はビビってんじゃねぇの?ギルマスさんよぉ。


「ふむ、逃がしませんよ“ヘルオー「蝶切ちょうきり」っ!·····やりますね」


逃げるロンに迫撃しようと、ヘルヘルが魔法を唱えるが、アオイの不意打ちでキャンセルさせた。


「“テレポート・ロン”」


瞬間移動だと!?ドロリはそんな魔法まで使えるのか。職としてあるのか知らないが、宮廷魔術師にでもなればいいのに。


「アオイちゃんが頑張ってるわ♡」


「ミュイとアオイの関係は親子か?」


あ、プライベートのことを聞いてしまった。通報だけはご勘弁!


「私とあの子たちの関係?親子よ♡」


「違うでしょ!?あの子たちはもともと武器!」


「もう娘みたいなものよ」


つまりどういうことだ?


「アオイとアカネは武器なのか?」


「私が産んだの♡かわいいでしょ?···はぁはぁ♡」


目がとろんとさせ、体をくねくねしながら言ってくる。


「ネジュさん騙されちゃダメ!スキルの効果で人になってるの!」


「スキル···?それって【命灯】?」


「あら、それを知ってるってことはあなたも?」


俺は頷く。これまで出会ったやつは誰も【命灯】を持ってなかったから新鮮だな。·····ちゃんと会って、話したのポポくらいだけど。


「じゃあアオイとアカネにはマークがあるのか?」


「上腕外側に剣のマークがあるわね」


ここよ、と言いながらミュイは俺に見せてくる。分かりやすく言えば、はんこ注射する場所。


「あなたは【命灯】を何に使ってるの?」


「こいつらだ」


俺たちを守ってくれているギルカンテを、顎でしゃくる。


「へー、元々は武器?」


「いや、ファンドで作ったフィギュアだな。等身大の」


···フィギュアなのか?だんだん道を逸れてる気がしなくもない。


「職業はなにかしら?私は鍛冶師よ」


そりゃ、武器を作ってるから鍛冶師だろうな。全く見えないが。


「俺の職業は人形使いだぞ」


「あら?人形使い···?」


ミュイは『人形使い』という言葉を聞いた瞬間、ミミの方を見る。


「に、に、ににに人形使いぃぃぃ!?!?」


戦闘中とは思えないほど、かわいらしい声が響き渡った。

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