(二)-6

 その指の差す先には、布団の上に仰向けで倒れている佐川青年がいた。

 青年は胸に刺し傷らしき傷があり、そこから血が大量に流れ出たらしい。衣類と布団がその血をすっかり吸っていた。

 豊永はその状況を簡単に確認すると、すぐに目線を男の目に戻した。

 男は「ウソは言ってないだろう」と言って口元だけで笑ってみせた。

「お前が殺したのか」

 豊永は念のためそう尋ねた。

「俺じゃない。俺が来た時には既にこうなってたんだ」

 豊永は男をにらみつけた。


(続く)

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