第93話 エスファハーンの街

「エステル先に行って、船を受け取っておいてくれ」


ライールさんは荷物を持たされてるの。

ズッシリ重い木箱。

にゃかみは槍らしいわ。

ジュアン商会の男の人も手伝ってくれるんだけど。

やっぱり人間の腕じゃキツイ。

台車に載せてるの。


「何をエステルと一緒に行こうとしてるんだ。

 キミも力仕事を手伝ってくれ」


エラティーさんも、無理やり手伝わされてるわ。


エステルちゃんとステュティラちゃんが先行ね。

わたしも着いて行きましょ。


エスファハーン街の大通りを突っ切って進むの。

にゃんだか街ではヒソヒソとはにゃし声がする。



封印解除ステータスオープン

【聴覚強化】


「皇子が殺されかけた?!」

「ホントかよ」


暗殺族セムだってウワサよ」

「ウソくせーな。

 そんなヤツら話は聞くけど見たコトねーぞ」


「だけど、良く助かったな」

「昨夜、このエスファハーンに逃げ込んだんですって」


「皇子は猫に助けられた、って言ってるそうよ」

「……ネコ?」


「って動物のネコか?」

「……さぁ……何かの暗号かしら」


そんにゃ声がそこら中で聞こえるの。



「なんだか街が昨日に比べて静かだね、ステュティラちゃん」

「まだ午前中だからじゃない。

 ……兵隊がやたら歩いてるわよ。

 昨日はあんなのまったく居なかったのに」


ヒソヒソ声はエステルちゃんたちにまで聴こえてにゃい。


ステュティラちゃんの言う通り、街を武装した兵たちが歩いてるの。

皇子が殺されかけたんですもの。

厳戒態勢を敷いてもおかしくはにゃいわね。


大通りから橋へ続く門。

街の出入り口には大勢の人間がにゃらんでるの。

多分出ていく人間たちに皇子の暗殺に関わったモノがいにゃいか、厳重に調べてるんだわ。


わたしたちはそんにゃ人たちを横目に通り過ぎるの。

目指すはザーヤンテ河へと出る裏口ね。


河へ出る門でも昨日より少し緊張したフンイキだったんだけど。

わたしたちは少女の二人と黒猫。

衛兵もそんにゃにしつこく取り調べしたりはしにゃかった。


入国しようとしてる外国人は厳しく調べてたみたい。

ライールさんは昨日来てタイミング良かったのね。


船着き場で砂海の小型船ニャビールジャーエヒを受け取るの。

そこでわたしは声をかけられる。


「そこの黒猫。

 キミだよ、少し顔をよく見せてくれないか」


言ったのは細身の少年、茶褐色の髪を前で切り揃えてるの。

この子供……

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