第57話 謝罪
「あらっ、みゃー。
みゃーもお茶が気になるの」
作り笑いを浮かべてエステルちゃんはわたしにはにゃしかける。
黙ってしまったファオランさんとお父さんの間に気まずい雰囲気が漂ってるの。
エステルちゃんはどうして良いか分からにゃくて困ってるし。
ステュティラちゃんはにゃんにも気付かにゃい風で
わたしは猫だし、お茶は飲まにゃいわ。
香りだけ楽しみましょ。
黒猫のわたし、エステルちゃんの膝に飛び乗って茶碗に顔を近づけるのよ。
「エッ?!
ホントにみゃー、茉莉花茶が気にいったの?」
「ハッハッハ。
動物は鼻が良いと言いますから。
ウチのお茶が上物なのが分かるんでしょう」
と、ニコヤカに語るお父さん。
でもファオランさんの方に顔を向けにゃいようにしにゃがらも、その実娘のコトがメチャクチャ気ににゃってるのが誰にでも分かっちゃうわよ。
シンイーさんが話しかける。
「旦那様。
お嬢様に手を上げた事だけは謝ってしまった方が良いのでは無いですか」
「な、何故私が謝らねばならんのだ」
「旦那様……
気にしてるのが丸わかりです。
お客様たちまで居心地悪く感じていらっしゃいます」
「な、なんだと……そんな事は無い!」
「……旦那様……」
ハァとため息をつくシンイーさん。
プイと斜め上を向いてるジュアンさん。
「それにしても、ファオラン様がいない事に気づいてらしたのですね」
「当たり前だ!
使用人たちの当番表を提出しているのはシンイーだろ。
交替で休みの日を取れるようにした、などと偉そうな事を言っていたのはどこかの誰かさんだが。
その当番表に一切誰かさんの名前が無けりゃ分かるに決まってる」
「……その誰かさんのせいで休みを取れるはずだった人間は当番をさせられてると思うがな」
「ズーハォ様、言い方がイヤミです」
と、誰かさんが立ち上がる。
座って黙っていたファオランさん。
「ファオランさん、落ち着いて」
「なになに、親子ゲンカ。
やる気なら加勢するわよ」
焦っているエステルちゃんとヤジ馬なステュティラちゃん。
「ウウン。
キチンと詫びをして来るの。
他のみんなにネ」
ファオランさんはテントを出て行って。
こっちまで聴こえるくらいの声で、他の店員さんたちに頭を下げていた。
「みんな、ゴメンなさい。
本当に迷惑かけたネ。
今日からアタシ休み無しに働くヨ。
替わりに交替で休んでネ」
「そんなお嬢さん、気にしないでくださいよ」
「そうです。
それにファオラン様が客引きに頑張ったら、お客さんが増えて私たち休むどころじゃ無くなっちゃいますよ」
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