第37話 引っぺがす

スポーツマン風の男の人が部屋の隅で小さくにゃっている。



護衛団で密偵の任務を受けていると言う男の人、イルファン隊長は船の上でも黒ずくめで顔まで隠していた。


「……あの……イルファン隊長……

 熱くないんですか?」


エステルちゃんはおずおずと訊ねたの。


「拙者は忍ぶのが仕事だ。

 気にしないで欲しい」


「気になるわよ!

 この暑いのに、黒ずくめで顔まで覆って、見てるこっちまで暑いじゃ無いの」


今は日中、砂の国の陽射しは強烈だわ。

砂漠を渡る船の甲板デッキにゃんて、スゴイ温度にゃの。

陽射しから守ってくれる天井のある客室キャビンにみんにゃいるけど。

それでも船体が熱を持ってしまっているの。

みんにゃ蒸し風呂状態。

風が通り抜けていくのが、せめてもの救いね。


ステュティラちゃんにゃんて、上はランニングみたいにゃシャツ一枚で下着まで見えちゃってる。

イロっぽいというよりは子供っぽいスタイルね。

ファオランさんはチィニャドレスの裾をギリギリまでたくし上げ、腕も肩まで捲り上げて、露出度が高い。

殿方がみたらヨダレを垂らしそうにゃ光景だわ。

エステルちゃんもターバンやマントは脱いでいるけど。

薄い布で生足や、二の腕は隠している。

それでいいの。

もうお年頃にゃんだから、ステュティラちゃんのマネしちゃダメよ。


この砂漠で昼間の陽射しをあまり浴びてしまうと。

布を羽織ってにゃいと、強い陽射しでヤケドしかねにゃい。

日陰にいる、少女たちは涼しくするため必死ね。


そんにゃにゃかで、一人黒ずくめにしていた男の人。

ステュティラちゃんやファオランさんが服を引っぺがしたの。


「……待て、キミたち……

 なにをする気なんだ?!」


「その暑っ苦しい服を脱がすに決まってんでしょうが」


「ウン、暑くて倒れチャウヨ。

 脱いだ方がイイ」


「いや、待て。

 待ってくれ!

 エラティくん、助けてくれ」


「うーん。

 イルファンさん、僕も脱いだ方が良いと思うんだよね」


「フフフ、一番隊隊長の許可も貰ったわ」


「ヨーシ、引っぺがすネ」


「いや、待って待って。

 ホントに……

 頼む、カンベンしてくれ!

 エラティくん……いや、エラティ殿……

 エラティ様、この娘たちをなんとかしてくれ~っ!」

 

そんにゃワケで黒装束をはぎ取られたイルファンさん。

呆れたコトに黒装束の下に彼は普通の服まで着てた。

にゃに考えてるのかしら。

ホントに暑くて倒れちゃうわよ。

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