第25話 飛んで来た人

「なんだ、なんだ、なんだーーー?!」


ライールさんが驚く。


交易都市ホルムスを覆う壁から人影が飛んで来たの。

お日様が逆光ににゃってその顔が良く見えにゃい。


その人影ってば両手ににゃにかぶら下げてにゃい。

あれってば猫だわ。

丸く太ったトラ猫とほっそりした小さい白猫。


人影はぴょーん、とわたしたちの乗る船の甲板デッキに着地した。



ファオランさん。

さっきまで泣きそうにゃ顔をしていた少女が大きにゃ声を上げる。


「もしかして……リリー?!」


人影が片手に持っていた白猫に飛びつく。


「やっぱり、リリー!」


「みゃにゃにゃにゃにゃー」


ファオランさんが白猫のリリーを抱き上げて笑ってる。

白猫の方も嬉しそう。


あの白猫ってば、もしかして……と思ってたけど。

前にわたしに挑戦して来た白猫。

街の女王猫の座をかけて勝負しニャさい。

そんにゃセリフを言ってた子ね。



「キミ!

 いきなり船に飛んで来て、何者だ?

 ビックリするじゃないか」


ライールさんが詰問する。


「父さん、止めて。

 この人は……」


浅黒い肌、漆黒の髪の少年は答える。


「ああ、いきなりゴメンね。

 失礼だったかな。

 僕は護衛団の隊長、エラティって言うんだ」


飛んで来たのは浅黒い肌、漆黒の髪をなびかせた美少年だった。



 

いったいにゃにがどうしたのか、と言うと。


「その白猫ちゃん、リリーって言うの。

 へー似合ってるいい名前じゃない。

 実は……数日前から僕の部屋に住んでたんだよ」


護衛団の建物の中には、団員が住んでる寮のようにゃ場所もあるらしい。

「おい、エラティ。

 ネコ好きなオマエにネコを可愛がるな!、とは言わん。

 だが、寮の中にまで入れるんじゃねぇ。

 建物が傷むだろうが」

「ナシールさん。

 別に僕が入れたワケじゃ無くて、勝手に入って来ちゃったんだよ」

「ん?

 その猫……真っ白だな……」



「それでさ、彼女がが探してた猫じゃないか、って。

 ナシールさんが言うから、連れて来たの。

 「「あの女、チャイニャの槍を安く融通してくれるかもしれんからな。

  上手く機嫌とっておけ」」

 って言われちゃった」


あはははは。

とエラティ隊長は快活そうに笑った。

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