第11話 イルファン
「あららら。
どーすんのよ、トーヤー隊長ったら。
完全にケンカ腰じゃない。
エステル、あの人たちとケンカしちゃマズイんでしょ」
「うん、ステュティラちゃん。そうだと思うんだけど……
でも商人組合と約束事があって、護衛団が犯罪者を一度連れて行くことになってるなら、それは正しいし。
でも、トーヤーさんだから……そこまで考えてないで女の子の味方しちゃってる気もするし……」
「アレシュ先輩、どーなんですか?」
エステルちゃんは色々考えて、アレシュ青年に訊ねている。
「えっ……えーと……
犯罪者は捕まえたら、本部にまずは連れて来いって言うんだけど……
実際にはケチな泥棒なんてイチイチ連行しないよ。
その場でお店に引き渡しちゃうもんさ」
にゃるほど。
決まり事と実際の現場のズレってヤツね。
どこの世界にもあるものね。
「えーっ、じゃあ、ここはあの泥棒を渡しちゃうのが正しいんですね?」
「いやー、でもあまりに酷い犯罪者だったりしたら、一つのお店に迷惑かけてるだけじゃないし。
取り調べした方が……
でもあの娘、そこまで悪い子にも見えないものな」
「結局!
どっちなのよ、アレシュ?」
「ステュティラ、こーゆーのは簡単には言えないんだって」
「あー、メンドくさい。
いいわ、アタシはやるわ」
と言ってステュティラちゃんは男たちとトーヤーさんの間へ。
「ちょいと、オジサンたち。
この娘は一端預かって行くわよ。
ダイジョーブ、ちゃんと調べてあなたたちの店から盗んだんなら返させるわ。
それでいーでしょ」
「なんだ、オマエ」
「ガキは引っ込んでやがれ」
ステュティラちゃんはガンと出ていったけど。
アッサリ男たちに返されてるわね。
「ガキですってー!」
「コラ、ステュティラくん。
剣を抜くな、街中だぞ」
「バカ、ステュティラ。
オマエ何やってんだよ」
「ダメだよ、ステュティラちゃん」
ステュティラちゃんが剣を鞘から抜きかけて、みんにゃで止めてるの。
しょうがにゃいわね、もう。
トーヤーさんはかぶりを振ってる。
「ん-、仕方ない。
この泥棒は一度、そちらに引き渡そう
しかし、相手は女の子だからな。
あまり乱暴に扱うんじゃないぞ」
「そうか、感謝する」
「……早くそうすりゃいいのによ……」
トーヤー隊長はメンドくさくにゃったのかしら。
泥棒少女を縛った布ごと男たちに引き渡そうとしている。
だけど。
サッと横から現れた人影がそれを奪い取る。
この人、さっき見た黒ずくめの人じゃない。
「トーヤーさん。
それはイカンな」
「あ……あなたは……
イルファン隊長?!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます