第38話 街を護る

「どこかの国の軍隊が襲ってきたりしたら、ペルーニャ帝国から部隊が出撃するわ。

 アイツラだってこの街は帝国中心の目と鼻の先。

 占領されるワケにいかないーのよ」


「だから。

 アタシたち護衛団はそれまで帝国兵が到着するまでのツナギ。

 しばらく街の人たちを護って戦う―の」


バゼル隊長が説明する。

女性口調のきらびやかな男性。

返すのはステュティラちゃん。

元気がとりえのおんにゃの子。



「フフン。

 なら攻めてきた奴らをアタシの剣でボッコボコに切り裂いて良いのね。

 やってやるわ」

「護って、て言ってるでしょ!

 ヤだ、この子。

 アレシュ、知り合いなんでしょ。

 何とかしてよ」


「バゼルさん!

 ドサクサ紛れに俺の尻を撫でないでください。

 ステュティラも現在は黙って聞いててくれよ。

 話がややこしくなるだろ」



「あの……

 先生、質問しても良いですか?

 エウロペの人たちが必ず襲ってくるようなお話ですけど。

 エウロペの人たちだって人間ですし、元エウロペの人だってこの街には住んでます。

 もっと仲良く出来ないんでしょうか?」


訊いてるのはエステルちゃん。

やっぱりステュティラちゃんとは一味違うわ。

遥かにマトモで良い質問ね。


「この街は自由都市。

 ここの役場に届けて、税金さえ払えばこの街の住民よ。

 もうエウロペ人じゃない。

 ホルムスの民ね」


「まあエウロペの奴らにとっても、ここは交易の拠点。

 チィニャやヴェーダの貴重な品が全部ここで手に入る。

 向こうだってここに売りに来る。

 気楽に攻めてきたりはしないわ」


「それでも。

 ナシール副団長なら言うでしょうね。

 だからって気を緩めるな。

 何が有っても町を護る。

 その心構えをしとけ。

 ってね」


バゼルさんがエステルちゃんの質問に答える。

ちょっと訊いてるコトとは違う気もするけど。


「あら、アナータ。

 その白い肌、青みがかった瞳。

 もしかしてあっちの血が混じってるのかしーら?」

「はい。

 父が元エウロペの人間です。

 現在はホルムスの砂船乗シンドバットりですけど」



ライールさん。

エステルちゃんのお父さん。

そうだったのね。

道理で日焼けしてるから分かり難いけど。

この街の人たちと顔立ちが少し違うと思ってた。


「ふふーん。

 なら気になっちゃうのも分かるけど。

 でもアターシたちは国際情勢なんて気にしなくていーの。

 イザと言う時、街を護る。

 それだけ考えて腕を磨いときゃいーのよ!。

 分かった?」

「はいっ!」

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