第33話 木の上で

ナシール副団長が殺気を込めた眼差しでアレシュ青年を見てるの。


「遅いぞ、アレシュ」

「今行こうとしていた所であります」


「ゴメンね、ナシールさん

 見習いの娘のネコが可愛くてさ。

 僕が引き留めちゃったんだ」


「エラティか。

 相変わらずネコ好きだな。

 お前を責める気は無いし、新人にキツク当たったりもしないから安心しろ」


助け船を出してるのはエラティ隊長ね。

美少年と呼ぶのが似合う小柄な男性。

アレシュ青年は感謝の目で見てるわ。



「キミ、エステルくんだっけ。

 このみゃーくんは僕が預かっておくよ。

 キミは学問部屋に行っておいで」


「すいません、ありがとうございます」


エステルちゃんもエラティさんに頭を下げる。

口のにゃかではつぶやいてるわ。


「みゃーが簡単によその人に抱かれるなんて。

 私か母さん以外の人に滅多な事で懐いたりしないのに」



「良し、行くぞ。

 アレシュのせいで遅くなった」

「ええっ、自分のせい……でありますか」


ナシールさんはこちらもロクに見ないでとっとと歩き出すわ。

アレシュ青年はその後を付いて行く。

右手と右足が同時に出てるわね。

カチンコチンじゃにゃい。

そう言えばナシールさん。

エラティ隊長や新人は責めにゃいと言っていたけど。

アレシュ青年を責めにゃいとは言っていにゃいわ。



一行は階段を上っていくわね。

建物の上の階か。


わたしは美少年の腕から逃げ出す。

少しお休みしちゃったけど、エステルちゃんの様子を見に来たのよ。


「アレっ、何処行くの?

 お散歩」


わたしは適当にカンで庭の木に登ってみる。

隣の木の枝に飛び移ったりしにゃがら探す。


居たわ。

エステルちゃん。

三階の部屋ね。


学問部屋とか言っていたかしら。

確かに机があって、前方に黒板らしき物。

教室風ね。


中にはエステルちゃん、ステュティラちゃん。

更にもう一人男性。

学校で言うなら生徒側の机に三人。


そして教壇側にアレシュ青年とナシール副団長。

もう一人いるわね。

男の人かしら、女の人かしら。



「木の上でお休みかい。

 みゃーちゃん」


うわっ、ビックリした。

私の後ろには美少年。

エラティ隊長。

着いて来たの。

ネコの動きなんて、簡単に人間が追えるモノじゃにゃいのよ。


「ここは日が陰って涼しいね。

 僕も眠くなってくるよ」


そう言ってエラティ隊長は目を閉じる。

高い木の上の枝で。

そんな安定している場所じゃにゃいハズにゃんだけど。

美少年の身体は微動だにしにゃいわ。

すごいバランス感覚ね。

寝息まで聞こえて来る。


ああ、良いわね。

わたしもお昼寝したくにゃって来ちゃう。

ダメよ、ダメ。

エステルちゃんを見守らにゃいと。

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