第32話 ブラックバロン

「えっ、みゃー?!

 なんでここに居るの?」


エステルちゃんがわたしを見て驚く。

気付かれちゃったか。

まあしょうがにゃい。

わたし現在美少年、エラティ隊長に抱かれてるんですもの。


「えーっ、男爵?

 ここまで着いて来ちゃったの」

「やっぱり、エステル……さんのネコか。

 俺もそうかなと思ったんだ」


「すいません、うちのネコが……」


エステルちゃんがエラティ隊長に頭を下げる。


「キミの家のネコ?

 可愛い仔だよね。

 毛並みもキレイだし、栄養状態もいい。

 ちゃんと世話してあげてるのが分かるよ」

「……はい。

 ありがとうございます……」


あらっ。

にゃんだかエステルちゃんとエラティ隊長が見つめ合ってるわ。

美少女と美少年な二人。

あらっ、あらっ、あらららら。

画になるんじゃにゃいかしらー。



「エラティ隊長!

 こちら新入り見習いのエステル……さんです。

 エステル……さん。

 この人は一番隊の隊長、エラティさんだよ。

 それでそのネコがエステル……さんの飼い猫、男爵です」


アレシュ青年が二人の間に割って入るわ。

にゃんだか慌てて、二人の視線が重にゃらにゃい様にしてる。

だからわたし男爵じゃにゃいの。



「フン、男爵か。

 えらそうな名前だな」


ビックリした。

いきなり現れた男の人のセリフね。


さっきのエラティ隊長も気配を感じさせなかったけど。

この男の人もね。


背の高い男性。

ターバンを直接頭に、バンダナ風にして巻いてるの。

そこから黒い長い髪の毛が伸びているわ。


「ナシール副団長!

 どうしたんでありますか?」


「アレシュ、お前が遅いから呼びに来たんだ。

 俺を待たせるとはいい度胸だな」


「いえ、今ちょうど行こうとしていた所であります」


ナシール副団長。

この人が、鬼のナシールと呼ばれてる人?

でもそんな風に見えない。

むしろ細身の男性よ。

髪もストレートの黒髪を伸ばして、服装もキレイ。

だけど、顔を見ると確かに目が釣り上がって少し迫力があるわね。


現在アレシュ青年を見る視線に険があるわ。

アレシュ青年はかわいそうに。

縮み上がっちゃってるの。


「男爵、エウロペ語で言うならバロンだな。

 ブラックバロンか。

 いや、このネコ雌か。

 女性の男爵はバロネスだったか。

 ならブラックバロネスか」


そのナシールさんが言うわ。

ブラックバロネス、それわたしのコト?

少しカッコいいかもね。

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