第30話 すばしこい美少年
それじゃあ、護衛団の建物をお散歩と行こうかしら。
エステルちゃんは建物に到着して、今手続きをしてるわ。
名前や住所を登録して、簡単な身体検査もあるみたい。
護衛団の本部は初めて来るの。
でもエステルちゃんがお世話ににゃるにゃら、今後も来る可能性が高いわ。
少し偵察して見ましょ。
本部があって、裏にはもう少し古い建物。
訓練場にゃのかしら。
その上にも部屋がある。
寝泊まり出来るようになってる。
泊まり込んでる団員もいるのかしら。
夜だって緊急事態は起こるモノね。
中庭に樹が有って、木登りでもしようかしらにゃんて思ってるわたし。
にゃんだか良い匂い。
わたしの横には干した小魚。
えっ。
誰が差し出したの?
いつの間にかわたしの横には小柄な人影が立っていた。
「初めて見る顔だねー。
くろねこ君」
わたしは飛び跳ねる。
人が近付いてきたにゃんて、全然気づいてにゃかった。
とととっと樹の裏に隠れるわたし。
ところが。
「食べないの。
お腹空いてないのかな
見た目もキレイだし、誰かに飼われてるんだね」
サッと目の前に煮干しが差し出される。
わたしの先回りしたのね。
煮干しの臭いはとても魅力的にゃんだけど。
初対面の男の人にオゴッて貰うほど軽い女じゃにゃいの。
わたし乙女にゃんだから。
エイッと樹を駆け登る。
高い枝の上まで着いて一休み。
ここは追ってこれにゃいでしょ。
「お魚キライ?
と甘い匂いのする揚げ菓子を差し出す青年。
ええっ、樹の上まで一瞬で上がってきたの。
人の背の高さを超える位置まで登っているのよ。
青年が差し出してるのは小麦粉に香草、牛乳を混ぜて揚げて砂糖をまぶした
パリッとしたドーナツみたいな物ね。
それもホントウは嫌いじゃにゃいけど。
わたし猫にゃのよ。
おさかにゃの方が良いに決まってるじゃにゃい。
負けたわ。
わたしは青年のすばしこさに敬意を表して、その手の煮干しに齧り付く。
うん。
美味しい。
「あっ食べた。
可愛いね」
干し魚にかぶりつくわたしを見て破顔する人。
アレシュ青年と同じくらいの年頃かしら。
成人したばかりの18歳前後。
でもその笑顔は子供っぽい。
邪気の無い可愛い笑顔。
ターバンも付けず漆黒の前髪をなびかせてる。
背は低めだけど、バランスの良い肢体。
浅黒い肌につぶらな瞳。
なかなかハンサムじゃにゃいの。
美青年て言うより、美少年と言った方が似合いそうね。
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