第24話 笑顔

「エステルくん、これは護衛団の入団試験だ。

 戦士の試験では無い。

 護衛団に入るなら、強いだけでは無い。

 人々を護ろうとする心が大事だと私は思う」

「はいっ、私もそう思います」


「君は道中、老婆に変装した私を気遣った。

 転んだ振りをした私を助け起こし、肩を貸した。

 優しい精神の持ち主だ。

 プラス20点」

「はいっ、ありがとうございます」


にゃによ、トーヤー隊長分かってるじゃにゃい。

50点からスタート、70点で合格と言ってたわよね。

にゃらもうこれで70点、合格ね。


「しかし、老婆を気遣うあまり周囲の警戒をしてはいなかった。

 マイナス10点だ」

「はい……」


そのくらい大目にみにゃさいよ。

エステルちゃん、優しいのよ。


「そして魔物ダェーヴァとの戦いだが、

 キミは盾と槍を扱えてはいたものの、熟練してるとは言い難いな。

 付け焼き刃と言ったところか、マイナス10点」


さすが、見抜かれてるわね。

エステルちゃんは槍の練習にゃんてしだしたのはつい最近。

護衛団の入団試験を受けると言い出して、必死にステュティラちゃんと稽古していたの。

いくらにゃんでも一ヶ月足らずでマスターできるハズにゃいわね。


「はい……」


あっ、エステルちゃんの表情が暗くにゃっちゃった。

にゃに考えてんのよ、トーヤー隊長。

エステルちゃんに助けられたのを忘れたの!


「しかし、エステルくんが使う風の神ルドラの加護。

 アレは凄い。

 その年齢であそこまで使いこなすとは、正直驚きだ。

 プラス20点」


「そして、アンズーの危機から身を挺して私を庇ってくれた。

 プラス20点。

 ただし自分も傷ついてしまった。

 ムチャをし過ぎだ。

 プロの戦士なら自分の身も守らなくてはいけない。

 マイナス5点」


「それで……えーと現在の合計が……」


トーヤーさんは自分の指を折って、にゃにやら計算してるわね。

自分で採点しておいて、分からにゃくにゃったの。

トーヤー隊長、計算は得意じゃにゃいみたいね。


「85点です」


エステルちゃんが言う。

頭のにゃかで計算してたのね。

さすがだわ。

さすがだわ、さすがだわ。

もう一遍言おうかしら。

さすがだわ、エステルちゃん。


「トーヤー、70点が合格ラインと言ってたな。

 って事は彼女は……」


呆れ顔で見守ってた団長が訊くの。


「もちろん、合格だ」


ぱあっとエステルちゃんの顔が明るくなる。

普段恥ずかしそうな顔で笑うエステルちゃん。

それも可愛いんだけど。

全開の笑顔はもっと可愛いの。


大男の団長もその笑顔に見惚れてるわね。

ほっこりと自分も笑顔ににゃってるわ。

エステルちゃんが可愛いからって惚れちゃダメよ。

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