第2話 買取ですか?ダメですか?


 どのダンジョンにも隣に設置されているダンジョン協会の買取所、今そこで今日の買取をしてもらうために番号札が呼ばれるのを待っている。


「35番の方、買取査定が出ました。受付までお願いします」


 あれ、この声は受付の優さんじゃない?大体私が買える頃に受付をしている人なの。


「優さんどうしたんですか?受付に魔石出した時は違う人だったのに」

「あ!胡桃ちゃん、ちょっと今日の買取の魔石を見て話を聞きたくてね。今からだと時間大丈夫?」


「今日は早めに終わったので大丈夫ですよ。なんかデートの誘いみたいですね」

「ん?胡桃ちゃんならバッチコーイよ?」


「優さん、バッチコーイは古いですよ。。。」

「え、ウソ、ほんとに?!じゃ、じゃあ今の子はどんなふうに言うのかしら?」


「いや普通に大歓迎とかウェルカムとかだと思いますよ。。」

「そうなの?!まあいいわ。とりあえず内密な話になるだろうから既に高ランク専用の買取部屋を押さえてあるから行きましょうか」


 優さんは受付の恥の階段から上がったところにある高ランク専用の個室に案内してくれた。


 部屋に入ると結構凝った作りになっていて生花とか、ふわっふわで座っただけで高いソファーだと言うことがわかるね。

 

 今回のように内密な話をしていることを見越して作ってあるのか窓がないの。


「そういえば正式に自己紹介してなかったわね。ダンジョン協会代々木支部、副長兼受付の新美優(にいみゆう)です」

「え、もしかして優さんって結構えらい感じの人ですか?名前呼びはまずかったです?むしろ様付けで読んだ方がいいんじゃ」


「いやいやいや、胡桃ちゃん落ちつて?様付けなんてしなくていいから。副長なんて名前だけの役職だから。実質受付だけみたいなものよ」

「そうだったんですね。びっくりしました」


「胡桃ちゃんになら呼び捨てで呼んでくれてもいいんだよ?」

「いえ、さん付けのままにしときます。。それより魔石についてって言ってましたけど」


 私はもしかして金色のスライムは提出しちゃまずかったと思ってしまう。


「いつも通り普通のスライムの魔石はよかったんだけど、残りの一個の魔石が問題でね。スライムの種類については知ってる?」

「はい、確か普通のスライムは薄い水色のスライムで、魔法使う個体もいてそのスライム達は使う魔法ごとの色だとダンジョン協会のサイトで見た気がします」


確か青色が水魔法

  赤色が火魔法

  緑色が風魔法

  黒色が闇魔法

  黄色が光魔法

みたいな感じだったよね。


「うんうんそうね、それであってるわ。スライムは属性によって色が違うの今回のスライムの魔石は一見黄色で光属性のスライムかと思ったけど妙に光沢があったし、買取の時は鑑定メガネを使う決まりがあるから鑑定してみたら幸運スライムって表示されてね」


「属性以外のスライムなんて今までで世界中通しても発見されていなくてね。今回っていつも通り2、3階層で探索していたのよね」

「えっと、そうですけど、それは問題なんですか?」


私の頭の上に疑問符がいくつも浮かぶ。


「通常だったら新モンスターって発表すればいいのだけど今回は今までと違った系統ということや本来通常のスライムしか居ない階層で出現するっていうイレギュラーが起きた、それは探索者達からしたら大きな不安材料になりかねないのよ」

「なるほど、今回のスライムはほんとは出てこない魔物だったんですね」


「それに今回のスライムの名前も問題だったの。恐らく幸運スライムの核はスキル持ちが加工すれば確実に幸運関連の能力が付くわ。この情報が広まったら幸運スライムを狙ってたくさんの探索者たちが代々木ダンジョンの2、3層に籠ることになるわ」

「そうですかね。私的に幸運能力はあんまり強くなれないと思うんですけど」


「恐らくだけど幸運能力はほぼ確実に宝箱のドロップを左右するわ。胡桃ちゃんもガチャ大好きな探索者達の執念は知ってるよね」

「ええまぁ。あの人達いつも私が潜る時も帰る時も絶対に見ますよ」


 私の言っているあの人達とは5階層のボスを毎日周回しているギルドの人のこと。


 ダンジョンの5階層ごとのボスを倒すと宝箱が確定で落ちるの。


 周回しているギルドっていうと独占しているかと思うかもしれないけど、そんなことはないの。

 

 2階層から4階層までギルドの人が常駐していてボスに挑む人がいたら優先的に順番を譲ってくれる。

 

 それに2階層から4階層までで困った探索者がいたら手を貸してくれるので代々木の初心者はみんな一度は助けてもらってるのよね。

 

 協会からしても死亡率を減らしてくれるのでギルドからも感謝されてるギルドなの。


「あの人達はほぼ24時間交代で周回してるらしいわよ。それでも私たちからすると助かってるからね。ありがたいのよ」

「私も一度助けてもらったことがあるので助かってます」


「それで話がそれっちゃったけどスライムの話に戻すわね。そんなわけでダンジョン協会は探索者達にそんなに低層で出るかもわからないスライムを狙い続けてるより、ちゃんと実力にふさわしい階層に潜ってもらった方がいいと考えたわけ」

「なるほど理解できました。つまり私は言いふらさないようにすればいいんですよね」


「胡桃ちゃんは理解が早くて助かるわ。そんなわけでダンジョン協会から胡桃ちゃんに対して箝口令が敷かれました。それと幸運スライムの魔石も売ってくれると助かるわ。買取に関しては強制じゃないわ。」

「わかりました。魔石についても元から買い取りに出すつもりでしたから大丈夫です」


「魔石の買取金額に口止め料の金額も含まれているよ。これで胡桃ちゃんも重要情報を知る人に仲間入りね!」

「私はごく普通の一般人なのでそんなのに仲間入りしたく無かったです」


とほほ というかのように私はがっくりした。

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