第132話 3人の女子会

 話を遡ること、一日。

 早乙女とユミと紫苑の3人は、GW明け初登校後の放課後、例のカフェに来ていた。


あねさん方、今日は親分とは一緒じゃないんですか?」


「そうよ、今日は女子会だから、甘い物メインにお願いね!」(ユミ)

「了解いたしました!もちろん、サービス致しますです!」

「先ずはお飲み物から頂こうかしら」(早乙女)

「もちろんです、姐さん!おい、お持ちしろ!」

 3人の目の前に、フレッシュフルーツドリンクスペシャルが置かれた。


「あとは適当に持って来てくれるかしら。今回は、お任せするわね」(ユミ)

「了解いたしました!当店自慢の、すういーーつ各種をお持ちいたしますです!」


「お金の事は気にしないでね、これは経費で落としてくれるから、弥生が」(ユミ)

「やっぱ、持つべきものはユミだわ!紫苑、そしてユミ、今日はぶっちゃけようね!あんた達、仲が悪そうだし」

「別にわたしは・・」

「そうよ、仲が悪いわ」(ユミ)


「ユミ、紫苑のどこが気に入らないの?」

「香織、そんなにストレートに訊かなくても」(紫苑)

「それよ、それ!先ずは、その良い子ちゃんブッテルとこ」(ユミ)

「別に良い子ちゃんブッテルなんて・・」


「あなたねえ、だからダメなのよ。護道なんかに付き纏われて、挙句に恋人になるのをみんなの前でOKなんかして」

「それは、妹のためで仕方がなかったのよ。紫苑が悪いわけではないわ」(早乙女)

「いいえ、あなたが悪い!妹の為?だったら、妹ちゃんが、あなたが好きでもない護道とそんな感じになって喜ぶとでも?そもそも、妹ちゃんが自分の為にお姉さんが犠牲になってるって知ったらどう思うの?妹ちゃんはあなたが藤堂のこと、つまりは村雨のことを好きだっていうのは知ってるんでしょ?」

「そ、それは・・・・」


「ふふ、まさか護道と本気で付き合っても良いって思ってるワケ?」(ユミ)

「わたし、付き合ってるかって言われたらちゃんと付き合ってないって言うか・・」


 ここで補足をしておくと、紫苑の妹の事、ユミがフジグループのお嬢様であること、早乙女とユミは藤堂とキスをしたことがあることなど、お互いに隠し事せずに既に話していた。

 だが、それはいつも早乙女を通してのやり取りであり、紫苑とユミとは直接膝を交えて話していたわけではなかった。


「はあ?あなたのそういう態度、直した方が良いわ。あなたの態度は一見優しいと見られ勝ちだけど、私に言わせれば、優柔不断。ハッキリと言うべきところは言わないと、それがホントの優しさって事もあるから。理由はどうあれ、そんなだから護道なんかがあなたのことを勘違いしたり、離れようとはしないのよ。ちゃんと言うべきだと思うわ、護道に!」


「そうよ、紫苑。あんた、やっぱりカズトが好きなんでしょ?それともが好きなの?まさか、本気で護道が好きになった訳じゃないんでしょ?ここでハッキリさせちゃおうよ。カズトは電話で聞いたって言ってたんだから。あんた、カズトとつき合うって言ったんだよね。だったら、私たちに、あんたにホントは何があったのか、ちゃんと聞かせて」


「私にも、あなたのことが腑に落ちないのよね。あなたの八方美人的な優しさのせいだと、さっきキツク言ったけど、でも、護道と一緒にデートを重ねて、それにホテルまで行ったよね。香織は何かを飲まされて、意識が混乱したまま連れて行かれたようだけど、あなたは違うわよね。それって、どういう事なのかな?」


「えっ?そうなの、ユミ?」(早乙女)


「ぶっちゃけるんでしょ。私の知ってる情報も、全部、ぶっちゃけるから。香織も紫苑もホテルに行った、ここまでは知ってるでしょ。香織はそこで意識が無くなったらしいから詳しい事は知らないようだけど、会長に襲われそうになってたところを藤堂が助けたんだからね」


「えっ?そうなの、ユミ?」(早乙女)

「そうなの!ホント、大変だったんだから。って弥生が言ってた。藤堂と弥生が大活躍だったみたいなの」

「ちょっといい?ユミ、さっきから藤堂って名前で呼んでるけど、カズくんって言わないの?」(早乙女)

「カズくんって呼ぶのは、おじい様にちゃんと認められた時に取って置くことにしたわ」

「そう、だったら早く認められると良いわね。ごめんね、話の腰を折って。わたし、カズトにお礼を言ってないよ。あと、なんかお礼しなくちゃ」(早乙女)


「わたしも、お礼をしないといけないわ」(紫苑)

「じゃあ、この後、ショッピングよね」(早乙女)

「おほん!私も付き合うわ」(ユミ)


「決まりね、さあ、紫苑の話を聞く前に、ケーキブレイクの時間よ」(早乙女)


 3人の前には、定番の種類のケーキが通常より2分の1サイズで3種類(いちごショート、チョコレート、モンブラン)が一人前として置かれていた。

 女子の話の邪魔にならないように、無言で給仕されたモノだ。


 3人とも、パクパクパックンコって感じで、美味しい♡とか、う~~ん♡とか、ムフフフ♡とか言いながら食べた。

 お紅茶でノドを潤しながら、紫苑が話し出す。


「あのオリエンテーション合宿のとき、ちょうど護道君が告白する前に、家から電話があったの。お父さんからだったわ。何だろうってビックリしたけど、内容は護道君と婚約する返事をどうするかってことだったわ」


「「ええーーー!!婚約~~!!」」


 そこまで話が進んでいることを二人は知らなかった。


 そして、このタイミングでケーキのお皿が下げられ、次に、ひと口デザートアイスの入ったお皿がサーブされた。

 皿の上には一口サイズのチョコ、バニラ、ストロベリーの3種のアイスが、それぞれに合わせたソースと共に円を描くように並べられ、アイスの間にはチェリー、イチゴ、ブルーベリーが数個散りばめられており、中心にはミントの葉が何枚か飾られていた。


 ぶっちゃけ女子会はまだ始まったばかりだった。

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