第98話 早乙女!

 学校が終わり、直ぐにトイレへ。

 そこから転移。

 いつも修行している神社へ。


 そこで、まず基礎鍛錬。

 じいちゃんとの修行時代からのルーティーン。

 呼吸法に始まり、身体と脳(心)の柔軟に、身体と脳(心)の負荷などを行う。

 今日は、ゆっくり学校で休めなかったけど、明日の護道対決に向けての特別メニューもあるので、気合いが入る。


 この前からのオーラを察知する練習。

 ここでは、山の中なので小動物が多い。


 しかし、人間の様に大きな気配を纏っておらず、感知するのが難しい。

 感知したら片っ端から、映像化を試みる。

 そうすることで、千里眼の体得を図る。


 もちろん、この訓練の合間に、キィと戦闘訓練に入る。

 時々、あの不味いリンゴを食べ、神社の手水舎ちょうずやで水を飲んだり、口をすすいだりしながら続ける。


 そして、対護道用としても、これからの戦闘手段としても、大切なチカラ(能力、スキル)の練習に取り組む。


 これは、かなりのイメージ力と自分のオーラの込め方やその操作方法などの訓練となり、脳が相当に披露する。

 それを、あのリンゴと水でエネルギーを補いながら、何度も何度も繰り返す。


 流石に、脳ばかり使っていても効率が悪いので、適宜、体術を中心とした戦闘訓練を挟みながら行った。


 こうして、オレは徹夜をした。

 ヘトヘトだったが、午前中の授業は寝ることにしていたので、ギリギリまで頑張り、野球部での朝練に参加した。


 そこでは、グラウンドの隅で、あの田辺中出身の佐山とピッチング練習をした。

 佐山の構えているミットの中にボールが納まるように何度も繰り返し投げ込む。


 それから、オレは佐山とキャッチングや配球について話していた。


 その時、距離的にはかなり離れてはいるが、嫌なオーラを感じた。

 そのオーラをしっかりと補足し、直ぐに訓練中の千里眼で映像化する。


 こいつは?


「~~~でいいのか?藤堂?」

「・・・・・・」

「おい、藤堂?」

 佐山に軽く小突かれた。


「えっ?ああ・・・もう一度言ってくれ」


 もう一度、千里眼を使う。


 あっ!!

 早乙女と男子生徒がキスをしていた。


 再び小突かれた。

「藤堂?おい、藤堂、大丈夫か?お前、体調が悪いのなら、昼までゆっくり休んだらどうだ?さっきからうわの空だし、顔色が悪いぞ」


「ああ、ごめん。そうするよ。でも、オレはお前の構えているところに投げるから、それを信じてミットは動かさないでくれ。どのみち、ボールを逸らしてもランナーなんか居ないんだから、どっしりと構えてくれてたらいい。それで勝てるから」


「まあ、お前の本当のスピードボールは、オレにはまだ捕れないから、変にミットは動かさないことにするよ。今日の藤堂のコントロールなら、大丈夫だよな。ホントに、お前って、スゲーな!」


「いや、コントロールなんて、みんなそのくらいは投げられるだろ?」

「はあ?バカ言うなよ。コントロールだけで名投手にも成れるんだからな」


「そうなのか?じゃあ、昼休みは頼んだぜ。ありがとうな、朝から」

「ああ、オレ達は、お前にどうしても勝ってほしいからな!じゃあ、昼休みにな」


 オレは、直ぐにまた、オーラを探す。

 早乙女のオーラは・・・・感知したが、もうヤツとは離れた所を走っている?

 では、さっきのヤツはどこに?


 感知し、千里眼で見ると、笑ってやがった。

 どす黒く、淫靡なオーラが出まくってるし。

 気持ち悪い。


 あれは、確か、オレの分心体が捉えた時のオーラの種類と似ている。

 やはり、ヤツが会長か。


 だったら、早乙女は・・・・・・。


 オレは、教室へ行った。

 ああ、ユニフォームとかはオレには無かったので、上のブレザーを脱いだだけで投球練習をしてたから、着替える必要はない。

 どうやら、女子マネージャー達は、オレを無視、あるいは敵視しているようだったからな。


 どうでもいいけど・・・・。


 午前中、オレは、分心に身体の機能を預けて眠ろうとしたが、早乙女のことが気になって眠れなかった。


 なんだか、本当の分心が出来ないでいるような感覚だった。

 これは?


『それ、並列思考っていうもので、今までの分心とは違うよ。分心を何回かしたことで、2つの思考を同時に行えるようになったんだろう。それに、片方が寝ている状態なら20%とか30%の分心のままで居られるけど、どちらも思考している状態だと、それを維持するのは難しいから、今の君ではまだ出来ないんだろうな。そして、並列思考の場合は、能力が均等分される。まだ君は、並列思考も分心も2つだけだけど、能力が上がれば3つ4つと分かれることだって出来るし、戦闘時に有利に働く。いろいろなことを同時に行えるからね』


『そうか、でも、この早乙女のオーラをキィは、どう見えてるんだ?』

『知らないよ。知ってても教えない。それは君の問題だ。君が解決しなければならないものだよ』


 やはり、そうか。

 これも試練、なのか?


 早乙女のオーラには、恋人同士が見せるオーラの色、ピンクっぽいモノを感じる。

 それと、なぜか、黄色?

 これは、怒っているのか、迷っているのか、ああ、戸惑っているのかな?

 多分、状況から見て急にキスされたんだろ?


 そんなに、嫌悪ほどでは無いのか?

 そこはわからんが、ピンクが優っているという事は、まあ、そういう事か。


 好きなんだろ?

 オレと別れて、そんなに時間が経ってないのに、早くも違うヤツを好きになるとは、もうオレ、ムリだよ。

 そんな女と仲直りとか、出来るわけが無い。


 ユミには悪いけど、もう関わりにはなりたくない。


 確かに、アイツ(会長)はゲスなヤツだ。

 でも、それを早乙女の為にわざわざ証明する?

 というか、フラれたオレが彼女の新しい恋の邪魔をするってどうよ?


 却下だ!

 勝手にやれよ!

 どうなったって、自己責任だ!

 オレは、知らねー!


 知らないよ・・・・・。


 オレを抱きしめてくれた早乙女。

 2人で幸せを作るって言ってくれた早乙女。

 上目遣いにダメかな?とか言ってくる早乙女。


 もう、そんな彼女は何処にも居ない。


 あんな事があったなんて、もう信じられない。

 あのデートでの事は、夢だ。

 悪い夢だ。


 今を見ろ、オレ!

 彼女の今のオーラを見ろよ、オレ!

 それが現実だ。

 悲しい現実だ。


 早乙女とユミの違いは何だ?

 ユミは、直ぐにあの、おじいにオレを会わせた。

 重いヤツだよ。

 そうだよ、オレと同じ重いヤツ。

 しかも、護道とかが垂れ流すオーラにも負けず、周りに流されない芯の強さがある。


 対して早乙女は?

 高校に入って、楽しい高校生活を送りたい。

 オレと同じ。

 だが、早乙女は護道の醜いオーラに染まっている感じがする。

 シオンよりは酷くは無いにしろ、オレには怒りと侮蔑のオーラを向けて来るし、周りに同調しやすい。

 周りの言う事、多数意見が正しいとかが、彼女の中には根強くあるのかもしれない。

 それは、委員長を長くやってきた弊害なのか、彼女の持って生まれた性格なのかはわからない。

 しかし、もっと自分の気持ちを優先するべきだと思う。

 ずっと自分を殺して他人を優先させた結果、自分の感情を封じ込めてしまう事に慣れてしまったのかもしれない。

 自分の信じる事も周りの為に曲げて来たんだろうな。


 もっとオレを信じてくれたなら、違う結果になったんだけどな。

 もう、彼女はオレを信じないのなら、そんな彼女をどう相手するって言うんだ?


 結局、彼女の場合は、恋愛は高校生活をエンジョイする為のゲームでしかないんだ。

 誰かが言ってたな。

 世の中で一番のクソゲーは、恋愛だって。


 本当の愛情を、相手の事を信じる、他の誰もが敵となっても信じ切れる、そんな愛情を彼女が持たない限り、彼女の恋愛という軽いゲームは続くだろうな。

 でも、それを教えるのはオレではない。

 って言うか、オレが言っても聞かなかったからな。

 もう、自分で気付くしか無いんだよ。


 そうなんだよ。

 オレ、勇者だけど、何も出来ねーんだな。


 勇者・・・・か?


 不意に勇者になる理由がわからなくなった。


 オレは、思考の迷路に踏み込んでしまったようだ。





~~~~~~~~~~

副題とかを変更しました。

もう、勇者になったから。

それに、もう現代ファンタジーになったから。

それに、ハーレム、好きでしょ?w

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