第89話 弥生さん
「お嬢様~、わかりました。ですが、ですが!必ず乙女は守ってくださいね!」
こうして、やっと、僕はティーを飲む事が出来た。
「あなたって、ホントに!乙女の部屋に忍び込むなんて、どうなるかと思ったわ」
「いや、ホントにごめん」
乙女って、自分から言ってるし・・・。
乙女とか・・・早乙女、どうしてるかな?
あいつ、もう仲直り出来ないのかな?
しかし、早乙女と似てるな、ユミって。
なぜだろ?
乙女的なところだろうか?
口では強がってる感じだけど、基本、ウブなんだよな。
乙女か・・・出まかせで、早乙女に乙女とか言ったよな、もう遠い昔の感じがする。
僕は、ユミさんにこれまでの経緯を話した。
住む所や資金の提供もお願いした。
ユミさんは、僕が晴れて勇者になった事を喜んでくれて、お祝いをするって言ってくれた。
「護道とか、クラスのヤツも、気がついてないよな。上手くいったね」
「咄嗟に臭いとか言っちゃって、ごめんなさい。わたし、別に貴方なら、臭いとか、だ、大丈夫だから(寧ろ、好物かも)。そ、そういう貴方も変わりなく好きだから。だから、アレは全部ウソよ」
僕は、彼女に
LHRの後、ユミさんが僕に話しかけてるのを知ってるヤツが居るはずだし、ユミさんが僕の味方だとわかるのは、今後の護道の行動を探る上では障害になるかもしれないって。
「ああ、もちろん、わかってるよ。それに、護道が上手く乗っかってくれたよな。これで、一番後ろで、誰からも話しかけてこないから、丁度良かったよ」
僕は、夜の間中、勇者の特訓をしてるので、学校に居る間は心を本体と分心とに分裂させて、本体を休ませていることとか、その間は思考力が低下したりしてる事とか、これからも変わらず話しかけないようにお互いにするとか、そういうことも話した。
「さすがは、勇者ね。凄いわ、そんな事が出来るなんて。私はね、悪いことしちゃったなって思ってたんだけど。でも、あの後、紫苑と護道が来たのは想定外だったわね。特に紫苑は、あなたの事にまだ関心があるみたいでちょっと、イヤな感じだわ。でも、護道って、あんなにあからさまに、あなたの事を叩くなんて、どうかしてるわね」
「まあ、そう仕向けたからな。シオンやクラスの連中の反応を見るために」
「紫苑、あなたを庇ってたわね。どういう事?」
「わからん、あいつは、特に感情が掴めないからな」
「へえーー、私の感情は掴めるんだ~」
「それは・・だって、好きだからさ!」
「うふふふふ、うんもう!」
早乙女と同じで、叩かれそうになったよ!
でも、顔を赤くして、可愛いな。
「おじょーさまーー!!お風呂、出来ました!その〜、先に入られるのはどちらでしょう?」
「もちろん、一緒よ!」
「おじょうさま~~~、わたくし弥生はっ、今は亡きお父様とお母様に頼まれて、ずっとお嬢様を御守りしていましたっ!そのわたくしは、もう要らないって事なんですね・・しくしく。そのクズイケメンとお二人で、このままお暮らしになって、もうわたくしとは一緒にお風呂さえも入らないなんて・・しくしく。わたくしのボディーガードも、わたくしのお入れするティーも、わたくしのこの大きなムネの抱擁も、もう必要ないと・・・しくしく」
「ふふ、弥生、私はもう、カズくんのモノなの。キスもいっぱいしたし、キスもいっぱいしたし、キスもいっぱいしたの。ごめんなさいね、弥生、ふふふふ」
「うう、おじょうざまぁ~~~~!!」
「君達、いったい、いつ終わるんだい?その小芝居?」
「弥生が悪いのよ、つい、ノリで」
「カズくん、ユミお嬢様をよろしくお願いします。それから、この際ですから、あの、わたくしもお風呂、ご一緒してもよろしくてよ、カズくん」
「えっ?カズくん?えっ?一緒?」
「あれー?カズくんって、もしかして、チェリーくん?」
「えっ?チェリー?」
チェリーとは、植物のサクランボのこと。また、サクラの木そのものも指す。一般にサクランボとして店頭に並ぶものはほとんどセイヨウミザクラ(西洋実桜)の仲間です。サクランボはカリウムの含有量が比較的多く、高血圧や動脈硬化の予防に期待できます。また、葉酸が比較的多く貧血予防にも効果的です。
などと、オレの頭に入ってる辞書にはある。
あとは・・・・・・。
むっ?
処女のことをチェリー?
だったら、チェリーくんとは・・・。
「弥生、遊びの時間はここまでよ!彼に似合う服装を用意しなさい」
ユミの一声で、辞書の検索は中止した。
「はい!それでは、少しサイズを御計りします」
「臭くないかい、弥生さん?」
「えっ?は、はい。別に大丈夫ですよ」
(男らしい匂いを嗅ぐの久しぶりだわ)
「長いわね。早くしなさい、弥生!」
「は、はい、ちょっと殿方を御計りするのは久しぶりなので」
「下着とか、全て用意するのよ」
「えっ?それでは、御脱ぎになられたお召し物を拝借しないと」
「そうね、ついでに、全部洗っておいてちょうだい。明日も制服は着なくちゃいけないし。お願いね」
「は、はい」
(や、役得です!・・いえ、これは、仕事ですからね・・うふ)
こうして、僕はお風呂に入った。
もちろん、ユミさんや弥生さんとは別々だ。
あれは、掛け合い漫才的な遊びだったんだから。
それにしても、でっかい風呂場だな。
湯船もでっかいし。
それに、出してあるボディーソープは、何とも言えないいい香りと泡立ちのクリーミーさが半端ない。
ずっと、泡立てていたい!
僕は体中を泡だらけにして、楽しんでいた。
「うん、うん、お願い!おじい様!ユミのお願い、き・い・て!」
「うん、うん、さっすがー、大好きーー、おじい様~~!!じゃあ、今晩ね!」
「弥生!何してるの?今、おじい様とアポ取ったから、私と彼の良さげな服装を用意してね」
「へふっ?・・はい!えっ?御前に、今からですか?」
「いえ、今晩のご夕食を一緒に食べて、それから少しお話をするだけだわ」
「よくもまあ、あのお忙しい御前にすぐアポが取れましたね」
「だって、可愛い孫ですもん」
こうして、ユミの計画も着々と進行するのだった。
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