第70話 LHR始まる

 6時限には間に合うように行った。


 誰も話しかけては来なかった。


 6時限が終わり、ロングホームルームが始まる。


 司会は、護道と早乙女だ。


「・・・ということにして、早くメンバー表を提出しないとな!球技大会のソフトは今度こそ、ぜってー勝つぜ!いいか、男子!」

「女子も、頑張ろうね。今度こそ、優勝よ!」


「護道!藤堂も入れようぜ!藤堂は、かなり上手いぞ!」(松村)


「もうメンバーは一杯なんだけどな。そうか、女子のバレーにでも入れるか?あはははは!」


 どっと、ウケる。

 つまらねーよ、何でこんなのが面白い?

 オレを弄るのが、余程面白いとみえるな、このクラスのヤツ等は!


「いや、冗談だよ。じゃあ、補欠にしとこうか?もう決まっちまったからな、レギュラーは!そうだな、荷物運びとか、ウチワでオレ達を扇ぐとか、ウチワを振って応援するとか、やることあったわ!あはははははは!」


 またもや、ウケる。

 早乙女もシオンも加藤も、みんな笑ってる!

(ユミと松村は笑ってない)


 このクラス、護道の色に染まってやがる。

 今、護道からクソみたいなオーラが出まくってる。

 気持ちが悪い。


 小学校の時のあのクラスと同じだ。

 オレを笑い者にしたいのか?

 ヒトを貶めて、そんなに笑えるのか?


 クラスメイト?

 もうどうでもいいか?

 コイツらとは、もう・・・・・。


「じゃあ、一応、藤堂の名前を書いとくか!面倒だがな」


 こうしてオレは、球技大会では補欠扱いとなった。


 オレの意思とは関係無くだ。

 オレの意思を聞く気もないようだ。

 どうでもいいか。


「最後になったが、藤堂がクラスのみんなに謝りたいという事だ。みんな、聞いてやってくれ!」


 オレは立ち上がった。

 みんなの視線が痛いが、言う事を言う!

 もう、あの頃のオレじゃ無い!


「オレは、今日来て、早乙女と護道から話を聞いて、よくわかったよ。こうして、発言の機会を与えてくれた事、感謝する」


「藤堂、早く謝れ!」

「そうだ、謝れよ、藤堂!」

「お前は、田辺中の恥だ!しっかりと謝れ!」


 オレは、そう言うヤツ等の顔をしっかりと確認する。

 ちょっとだけ、間を置いてやったら、護道の子分が「あーやーまれー!」と、調子をつけて煽った。

 すると子分達は、それに合わせて「あーやーまれー!」と合唱する。


 他の生徒も、感染したかのように合唱する。

 何かに取り憑かれたように。

 異常だよ。


 まったく同じだ!

 あの時と、まったく同じ。

 また、まるで「なっかしたー」と言われている気分になり、心が震え、吐きそうになる。

 でも、オレは、昔の村雨とは違う!

 違うんだーーー!

 思わず、コブシを握りしめる。



 護道からは、これでもかと汚い口から、身体から、全身から気持ち悪いオーラが出まくって、このクラス中に立ち込めてきている。


 ユミと松村は、それに抗うかのように苦しげな表情を浮かべている。


 紫苑はニタリと笑っている。

 護道は、とても絶好調だ。


 早乙女は?

 怒っている?


「みんな!ちょっと静かにしてよ!先生も、寝てないで、起きて下さいよ!(寝てるフリなんだよね!)」


「ああ・・。コラッ!隣の教室に迷惑だ!みんな、静かに!・・続きを」


「もう、みんなの言いたい事もわかるけど、藤堂が喋れないじゃない?藤堂も、時間がないから、早く謝んなさいよ!」


「大変だな、早乙女も」

「はい?誰のせいだと思ってるのよ!」


「早乙女、落ち着け!さあ、藤堂、ちゃんと謝れ」


「じゃあ、いいか?オレは!!」

 そう言って、ひと呼吸置いて周りを見る。


「お前等を、軽蔑する!!」

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