第67話 ウラ藤堂
~~~カズトが帰ってからのオリエンテーションでの話
「午後からは、まず、クラス委員長と副委員長を決めてもらう。もう、名前と顔はわかっているだろう。クラスの代表を決めるのだから、しっかりした者を選ぶように!いいか、しっかりした者だぞ!例えば、自己紹介でも1番点が良かった者とかだぞ!みんなわかってるな? 」
こうして、投票が行われた。
結果は、藤堂がダントツで1位だった。
2位と3位は僅差だったが、2位護道、3位早乙女だった。
「これはまずいですね、先生。こうしたことになるとは思わなかったから、これをみんなに初めから教えとけばよかったですね」
護道は、そう言うと、プロジェクターを子分に用意させた。
護道の子分は、この前まではクラスの中では2人だけだったが、あと3人も増えている。
その中に、横山の姿があった。
プロジェクターに映し出されたものは、ネット上のとあるサイトで公開されていた文章だった。
そこには藤堂がしゃべっていたのとほぼ同じ文章が載っていた。
日付は2年前、ちょうどラグビーのワールドカップが行われた時期で、「ワンフォーオール、オールフォーワン」と言う言葉が国民の多くに知れ渡った時期でもあった。
「なんだこれは?」
「えっ、これは?」
「なに、これ?」
「まじか?」
「ウソでしょ?」
みんなは目を疑い、藤堂を疑った。
「みんな、ご覧の通りだよ。藤堂は、自分で考えた文章じゃあなかったってことだ。感動して、オレ等、拍手までしたのに(オレはしてねーけどよ)、まったく、裏切られた気分だぜ!」
「ちょっと、待って!これって、ホントなの?」
「早乙女、君は藤堂ととても仲が良いようだが、残念ながら、ヤツの正体ってのはこういうことだったんだよな。見て見ろ、日付を!もう、2年も前のあのラグビーのワールドカップがあった時だ。あの頃、この有名な文句で中学生とか高校生が作文を書かされたりしたもんだったよな。そして、ネット上では、この文句をお題にした作文が募集されたりもしてたんだ」
そう言って、護道は「ワンフォーオール オールフォーワン」と書かれてある部分を指し示す。
「そうなんだ・・・でも、こんなにも同じなんてことがあるの?」
「早乙女は知らないらしいから、横山、言ってやってくれ」
「藤堂は、中学の時にスーパーマシーンとか言われてたのは有名だし、知ってるヤツもいるよな。ヤツがなぜそう言われてたのか、それは、本の文章とかがそのまんま口からスラスラと一度読んだら出てくるんだよ。とにかく、記憶力が滅茶苦茶に良いわけなんだ。加藤は一番よく知ってるだろ」
「そう言えば、百人一首大会があった時に、クラスの選考会で断トツの一位だったわ。しかも、競技かるたをしてる子がいたにも拘らずよ。それに、古文の文章を暗記する授業があったんだけど、すぐに手をあげて、スラスラと何も見ずに言えちゃったのよね。もうね、先生が、はい始めって言って、数秒したら手をあげちゃったのよね。信じられる?ああ、もちろん、初見の文章だから。先生が作ったプリントだからね」
「加藤もそんなことを知ってるという事は、そういう事なんだろうな。それから、この際だから聞くけど、同じ中学の松村、お前も何か藤堂の噂を知ってるらしいじゃないか?」
「えっと、知ってるけど、そんなに大したことじゃないけど、いい?」
「ああ、先生、ついでに聞いといてもいいよね。だって、彼が信用に足る人物かどうかを知ることは、オレ等の代表を決めるんだから、重要な事だしね」(護道)
「ああ、許可しよう。委員長として適任かどうか、どんなエピソードでもいいから、みんなの参考になるかもしれんしな」
「じゃあ、言うけど、中学1年の時に一緒だったんだけど、藤堂にね、ゴミ箱を焼却炉まで持って行ってって頼んだんだ。で、渡したら、持つ手が震えだして、ゴミ箱を落としちまって。もう、辺りに散らかってさあ、みんなでそれを拾ったんだけど、藤堂だけは拾わずに、何かブツブツ言って突っ立ってるんだよ。ちょっとみんな怖くなって、引いたわ」
「あっ、思いだした!彼がマシーンって言われた裏の理由っていうのがあるのよ。あっ、でもこれ、あくまでも噂だから・・・(ちょっとヤバいかな?)確証があるわけじゃないし・・・・」(加藤)
「まあ、ついでだから言ってみたら」(護道)
「・・・ええっと、女子がゴミを捨てた後のゴミ箱をずっと見てたとか、先生が止めるまで運動場を何周も走り続けたとか・・・・」
「あっ、オレ、知ってるわ。ウラ藤堂ってやつだろ、それ!」(近藤)
「何だ、それは?」(護道)
「藤堂は、女の子を弄んで捨てたとか、黒板を舐めたとか、よく体育館裏で女子とキスしてるとか、暗記するのに本を食べてたとか、まあ、よくある噂話しだけどね・・・(ちょっと言い過ぎちゃったかな、でも噂だから)」
「藤堂は、自分から変人とか言ってたらしいけど、どうやら本当らしいな、なあみんな?」(護道)
「先生、おかしいです!だいたい、彼の居ない所で、彼の事、生徒一人の事をこんなに色々と詮索するなんて、問題だわ!しかも、噂なんでしょ、そんなの!」(早乙女)
「ああ、そうだな。よし、ここで一先ず、休憩だ。10分後に、また再開する。みんな、どうしたらいいのか、ちょっと冷静になって考えてみてくれ」
こうして、小休止に入った。
すると護道は、早乙女と紫苑を誘い、子分と共にとある場所へと行った。
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