第◆話 ベルキスカ・グレイドハイド
その後、閉会式を執り行う際、
加えて、エキシビションマッチの最中、度々バーンウッド卿らしからぬ精彩を欠いた動きに疑問、または不振を抱いた観客たちがいたことも確かでは会ったが、それも、エキシビションという趣旨を正面から捉えたギルバート卿による趣向であり、ジョスト・エクス・マキナという競技の魅力を知ってもらう為に迫力ある拮抗した戦いを、文字通り体を張って演出していた……という形で落ち着いた。
事実、そう思わされるだけのインパクトが、最後の決着にはあった。
それは同時に、本大会中に大怪我といえるものを負ったのはその戦いにおける二名だけだったとも言い換えることが出来た。
ニア・ヴァルムガルドの機士は機体がパドックに収容された直後に専用の医療チームが用意され、カクラム商会の用意したメディカルトレーラーに収容された為、怪我の全容を外部が知る余地は無かった。
機体が大破したディノニクスの機士は命に別状はないものの、豪快に錐もみ状態となったコックピット内にいたとあって五体満足ではあるものの軽傷とは言えず、脳震盪と右腕の上腕骨にヒビが入り、内臓の負傷、また肋骨と左足の骨折という大怪我を追った。 だが、搭乗者保護が徹底されたコックピット機構に加え、機士としての体は仕上がっていたこともあり、それ以外は打撲程度の怪我で収まり、コロシアムに併設されている病院の医務室で治療を受けることとなった。
日が落ち始め、夕闇に町が染まりゆく中、ベルキスカ・グレイドハイドはそのディノニクスの機士が収容されている病院へと足を向けていた。 コロシアムで披露したドレスと、
「何だ、貴様」
重篤患者用の特別病棟。 そこに、医師にも看護師にも見えない黒のローブを纏った男達がその病棟を守護するように、と言うより、監視するかのように配置されていた。
その光景は明らかに異様であり、本来いる筈の医療関係者が誰一人として姿を見せないことが、その異常さに拍車をかけていた。
そんな誰一人として近づきたくなさそうな空間に、ただ一人ドレス姿の女性が歩み寄っていく姿を見れば、その黒いローブの男でなくても正気を確かめざるを得なかっただろう。
「すみません、大通りはどちらかご存知かしら?」
日の陰りもあいまって、妖艶に映るその女性に若干の不信感を抱きながらも、男は職務を全うする為に余計な関わりを持つことを避けた。
「知らん。 他所へ行け」
「あら、つれないのね。 でも困ったわ。 先導を勤める方がご存じないとなると、他の方も困るでしょうに……」
「何?」
話が噛み合っていない。 道を知りたいのはこの女ではなかったのか? それに、先導を勤めるのが、誰だと言った――?
そう思案を巡らせた男が、再び声を発することは無かった。
「解らないか? 黄泉路の大通りの事だ。 今から大勢通るんだからな」
何故なら、口調が急に変わった女が手にしていた
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