第36話

「それくらいの認識か。」


ミウスさんについてはほとんど知らないようだ。


「ええ、私どもも突然昨日こちらにアプローチを仕掛けてきたギリシャの術者教会から使者が来まして彼女を用いてギリシャもあなたを監視すると伝えられたばかりです。」


ミウスさんがこちらに来たときは牛の姿だった。

一度神に連行されてから住所ができたにしては時系列がおかしい。

つまり昨日から既に神の介入があったと見るべきだ。


俺の中で思う神とはあの異形。

ギリシャ神話、創世神章、第一節、大きな口を開いた神は闇を生み出し闇から神を創った。

一柱は大地を創り

一柱は冥府を創り

一柱は天上を創り


全ての祖を創ったとされる日本で言うイザナミ、イザナギの関係だ。


「考え中のところ申し訳ございませんがそろそろ彼らを排除してくれませんか?」


異形たちが餌をとれない猫のように顔をぎゅうぎゅうにすし詰め状態で結界に張り付いていた。

よくもまあこんなに成るまで掘ったからしにできたものだと感心すらしていた。 


「いつに成ったら排除するのかと思いましたがあなたは排除も出来ないのに結界を張っていたんですか?」

「それは………私はこの土地がここまで異形たちが居るとは存じ上げませんでしたので結界の維持で精一杯なのです。

 異形は術者を狙いますから必然的に今術者として術を発動している私か視界から認識をしていたあなた様となります。

 お嬢様は今しがた見えるようになったのでこれ以上異形にかかわると碌なことがありませんからね。」

「面倒臭え。」

「まあそうおっしゃらずに報酬は弾みますよ。」

「報酬ってなんだよ。」

「そうですね、お嬢様のスリーサイズの情報なんていかがでしょう。

 前払いでお話ししますね。

 上からバストH「もういいからやるわ。」ッち………。」


なんか一度はまったら抜け出せなさそうな沼にはまりそうだったからわき目もふらずに戦闘じゃあ!


「異形相手に正拳突き、さらには抜塞大の中の山突き。

 視界を制する場所を的確に見ながらも他の弱点を的確についていますね。

 このような術は文献では剣聖上泉 伊勢守 信綱、流派無き流派を開拓していった御仁たちしか存じ上げませんわ。」


異形たちは何も人に近しい者たちだけではない。

夕闇に紛れて巨大な影を持つモノ。

羽虫以下の小ささの中に土佐犬のごとき重圧を感じるのモノ。


「巨大なモノには合気?ですか。

 それにしてもどんな技でも力7割、技3割と呼ばれているというのにゾウがアリを投げているようにしか見えませんね。

 いえ、これはアリに失礼でしたね。

 あの体格差ならアリとカブトムシと同じくらい。

 なら力も持っていると見るのが妥当でしょう。

 体重が少し気になりますが………

 確かデータ上では身長175㎝、平均より高めの身長ですがこれはまあいいです。

 体重が52kgの瘦せ過ぎな体系とお聞きしていたのですが地面の踏み込みから体重は90kgは超えていると考えられますね。」


背後からの攻撃は先ほど得た五覚の力を使い。

聴覚と触覚を用いて視覚に反映させる。

また嗅覚、味覚が危険信号を再現する。


「死角からの攻撃を?

 これも合気?

 それにしては空手に近い動きでしょうか?

 平面を想定した動きなら対処可能。

 夫婦手という心構え、それに加えて合気の類。

 いいえ、それだけではありませんね。

 妙に重心が安定している。

 片足はバレリーナのようにしなやかかつ強靭。

 背中、腹筋の身体の大部分の筋肉も持久性、瞬発性がともにずば抜けている。」


重圧を感じるモノはすぐに排除レベルを跳ね上げる。

後ろを見なくても感じられるようになっとはいえ油断は禁物。

時偶流戦士術と隠忍を併用して認識のずれを生み暗殺を最良結果とする。

真っ向から戦うのは愚の骨頂。


「力の大きさの判別が上手い。

 さらにはふと私でさえ彼を見失うことがある。

 鬼の術?

 幽世と常世にずれを生じさせているのでしょうか。

 しかし虎の霊は隠密を得意とする生態が残っているとするのなら狩りの力を憑依させている?

 彼は今までその存在すら知らなかったのに?

 契約をした?」


侍女の葛西 詩は電話越しにそれらのことを話しながらリアルタイムでの報告をしていた。

自分の上司である加藤 明日香の父親にお伝えするためだ。


『ああ、わかった。明日香が治ったときに会ったことで確証はないが虎の方は神獣だ。

 少なくとも弱っていても明日香を魅入った神を消滅させるくらいには強力な神獣だろう。

 鬼の方は私が関知した限りでは一匹ではない。

 ただ力が統一されていてどれがどれだかは判別ができない。

 可能ならそのまま監視を続行してくれ。』


「畏まりました旦那様。

 ですがこの山も異常ですので追加人員配置を要求します。」


『承知した。

 名目は幾らでもあるし娘の恋路を応援したいがその辺りは君らに任せる。

 くれぐれも封印されている者たちを刺激しないように術の使い分けはしっかりしてくれよ。』


「はい、ですが戦闘を見ていて他に気になった点がございます。

 ただし確証は在りませんが……。」


『今はどんな情報でも欲しい、行ってみてくれ。』


葛西 詩は目の前の光景をありのままに話し。


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スライム道

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