第32話

花束


それを掲げた。


「…………ふぇ……?」


するとなんということでしょう。

あれほどまでに興奮していたミウスさんが落ち着いてきたではありませんか。


それもそのはず、刀赤が購入したものは


ネムリソウダケドネムラナイ草


某ハンティングゲームすれすれの名前を採用している変な名前の草だ。

商品の説明文を見るとこんな風に表示されていた。


ネムリソウダケドネムラナイ草

この草は読んで字のごとく眠くなるけど眠ることは無い草。

何故か人の居る場所でしか生えない。

眠りそうになる鎮静作用がある反面、覚醒作用があるため拷問をする際に効果的。

しかし単体では効果が薄いためこの効能に気づいたものはこの世界で誰も居ない。

尚花を咲かせるには興奮しまくっている生物の前に草を差し出さなければいけない。


花言葉は「落ち着いているあなたが好きだ」「あなたを信じても良いですか」「優柔不断」「愛以上恋未満」「上心」


以下説明文はこの花を1000000本購入した方にのみ表示されます。


主な原産地

アマデウス帝国の歓楽街各地

ボジタット王国の一部の地域


価値 50本でボジタット王国銅貨1枚


今までスキルばかりに目が生きがちではあったがこう言った異世界ならではの商品もあった。

もちろん地球で手に入る商品も数多く出品されている。


「…………ごめん……。」


ネムリソウダケドネムラナイ草の効果によって鎮静と覚醒の両方を行った彼女は元の様子に戻っていた。

所謂眠る前にカフェインを取り過ぎてしまった人と同じような状態だ。

身体は眠いのに目が冴えているから思考と行動が一致しない形。


自分自身でもこの草を鑑定してみると自信が最も欲し最も欲さない、信じてはいけない文章が出てきた。


ネムリソウダケドネムラナイ草

覚醒作用と鎮静作用の両方を兼ね備えた草。

花を咲かせるには興奮しまくっている生物の前に草を差し出さなければいけない。

そしてその花の朝露を咲かせることができたのならそれは上心。

下心の恋心、真心の愛、上心はならあなたを決して裏切ることは無い。

ふ変たる上心となるだろう。


元来ふは不からできた文字。


しかし心にも見えて欲しい。

私が愛した異世界人との蜜月以上の日々を忘れぬためにこの花を御創り致しました。


牛鬼族初代女王と異世界より訪れし御霊様への愛をこめて。


「半分歌詞みたいなものなんだよね。」

「……それは…何な……の………?」

「知らないよ。」


この花を見て知ったことは教えない方が良いと思った。

伝えてしまっては俺が彼女のこと信用していないと意図して教えてしまう気がして他ならなかった。


「…あな……たの………それ…は……。」


彼女は口を閉ざして手を引いてきた。


「今度一緒に学校に行こう。」


はっきりと言の葉を口にした。


「…練…習…した……。」


知らぬ言葉をはっきりと伝わり言えるようにするのには大人からすれば一節でも相当な勉強となる。


努力する姿は人を魅入らせる。

自分に足りないものを補おうと必死に抗う姿は人に自分もできるという希望を与える。


そして絶望も同じように。


だから人は願うことを知っている。

自分にはありえない大きなきっかけが人生を変えていた理想の事実を。


目の前の彼女また恋をしたからという大きなキッカケから変わっていた。

でも、本当に恋は大きなキッカケ言えるのだろうか。


新たな言葉を覚えるのには恋人を作ることが一番と言うようにきっかけとしては十分と言える。

でも恋とはあくまでも生物学的な子孫を残す本能が及ぼす必然的な感情に過ぎない。

だから恋人というのは弱い。

初恋があってもまた新たな恋が生まれる。


恋は誰しもがする感情。

そして言語を覚えるのに恋人を作るのが有効な手段。


即ち努力の方向性を先ずコミュニケーションを取ることに優先する。

恋人から好かれるための努力の方向性を信じ続けることで人は変われる。


結果がどうであれ人は変われる。

その理想の体現を今彼女がしている。

受け入れがたい事実。


それを受け入れなくてはならないのも


「人生か。まあ良いけどね。」


はじめは明日香さんのことを試そうとわざわざ自分の損得を考えずに治したのに。

異世界、世界に限らず確かめたかった。

人は皆、感謝を忘れ、俗世にまみれることを信じたかった。


だというのに俗世を否定する前に人情を魅せられている。


「…………明日香…も………きっと…でも…私………あなた…好き…あなた………見てたい………」


彼女に触れられると今まで付き合っていた傷跡が意識していないのに消えた。

服をビリビリにミウスさんは破っていた。


「…………傷………があっても………あなた…」


傷跡がまた浮かび上がった。

それらをなぞるように見ていく。


「………なくて…も……あなた…変わら…ない…」


また消えた。


「……信じる…疲…れ…る…だか…ら…ま…だ…しなくて…い…い……」


今はただ、解らない涙の意味を考えることを辞めようと思った。

ほんの少し前に進んでいた道は進むよりも早くに後退りしていた。


「異世界への無料パスポート。」


静かに原点を見に行こうと思った。


「mou(;´・ω・)?」


ミウスさんは何で今の時に行っちゃうのかなと思っていた。

まだまだ悩みを抱えている男の子は難しい。


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スライム道

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