Tale22:実在したのですか、妖怪無自覚絵下手おんな
またシキミさんたちがいるのではないか、ちょっとだけ不安ではあった。
しかし、郊外のミリナちゃん家に向かう街道には人影はない。
私とスラリアは何事もなく、家の前で私たちを待つミリナちゃんに会うことができたのだ。
ちなみに、私がぶつかって壊した農場の柵は元通りに直っている。
ゲームシステムによる修正なのかと思ったが、あとで可愛いミリナちゃんが可愛い口調で、なんか壊れちゃってたからお父さんが直したんだよと教えてくれた。
「お姉ちゃん、描けたよ!」
「えっと……私も、描けました」
私の前に座るミリナちゃんとスラリアが、ほとんど同時に告げる。
今日のお勉強は、お絵かきをすることにした。
自分の好きなものを好きなように描く、それだけ。
発想力や思考力、それに空間認識力などのいろいろな力を伸ばすことができるだろう。
「どれどれ?」
先に描き終えた、ミリナちゃんの絵から見せてもらう。
実は描いている途中からちょっとだけ見えてしまっていて、ニヤけないようにするのが大変だった。
「えっ、すごいっ! これ、私でしょ?」
「うんっ、私、お姉ちゃん好きだから!」
そう、ミリナちゃんは私を描いてくれていたのだ!
満面の笑みで言う愛おしい生徒を、思わず私は抱きしめる。
可愛いミリナちゃんの絵は年相応ではあるが、ちゃんと私だとわかるような可愛らしい絵だった。
「どうしたの? スラリアも上手じゃないの」
ちょっと不満そうなスラリアの頭を撫でながら、私そっくりに描かれた絵を褒める。
さすがは真似るのが得意な魔物だけあるのだが、なにが不満なのだろうか。
もしかして、ミリナちゃんに対するヤキモチかな?
「くぅ……お姉様の美しさは、こんなものではありません。まだ、この身体を動かすのに慣れていないからっ……!」
スラリアは拳を握りしめながら、なんだか芸術家のようなことを言い出した。
志が高いのは何よりだけど、すでに十分上手い絵だと思うよ?
「ねー、お姉ちゃんはなに描いたの?」
私の腕の中から、ミリナちゃんが聞いてくる。
二人が描いている間は手が空いていたので、私も絵を描いていたのだ。
「えー、でも、ちょっと恥ずかしいな」
あんまり絵は得意じゃなくて、中学校の成績は美術だけ5段階評価で3だった。
でも、テストは100点だったから、絶対におかしいんだよね。
「お姉様の絵、私も見たいです!」
「お姉ちゃん、見せてー」
うぅ、サラウンドサウンドで攻められたら、抗うことはできない。
「あのね、あんまり上手くないからね……?」
自分が描いた絵を、ミリナちゃんとスラリアに見せる。
二人とも私を描いてくれていたのがわかっていたから、私は、一生懸命に私を描く二人を描いたのだ。
私の絵を見て、なぜかミリナちゃんとスラリアは押し黙った。
あれ? 嬉しくなりすぎちゃったのかな?
「えへへ、どうかな?」
我慢できなくて、私は感想を求めてみた。
しかし、二人とも、お互いの出方を窺うようにちらちらと見合っている。
「ん? こっちのスラリアとか、よく描けていると思うけど」
「ぁっ、そう……ですよね! やっぱり、以前の姿の方が馴染みがありますものねっ」
「いや、描いたのはいまの姿だけど?」
どうして丸を描いて色を塗るだけのスライム状態を描くと思ったのだろうか。
私の返事を聞いて、スラリアは口をもにょもにょとさせていた。
「そっちが、スラリアお姉ちゃん……? じゃあ、こっちのもじゃもじゃの魔物みたいなのが……」
「ん? ふわふわな癖っ毛の可愛さ、よく描けているでしょ?」
ちょっとだけ慎ましい胸を張りながら、私はミリナちゃんに微笑む。
すると、ミリナちゃんはなんとも不思議な表情で、自分の髪の毛を上下にもふもふさせるのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ミリナちゃんの家を出たときに、いつもの黒い画面が現れた。
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【レベル】が、10になりました!
【ステータス】を10ポイント付与します!
【スキル】不器用を取得しました!
物理防御のステータス値を、10%だけ増加します。
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依頼を達成したからレベルが上がったのだろう。
もらった10ポイントは、リリアのアドバイス通りに敏捷に、さらに攻撃力不足を解消するために物理攻撃力に振ることにする。
不器用のスキルは、スラリアと同調したら物理防御の意味がなくなるんだよね。
まあ、もらえるものはもらっておくことにしよう。
スキルの効果も、私でなければ跳びはねて喜ぶぐらい強いものだと思うし。
でも、この不器用って、どうして取得できたのかな?
不思議でしょうがない。
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【名前】リリア
【レベル】10
【ジョブ】テイマー
【使用武器】スライム:習熟度5
【ステータス】
物理攻撃:25 物理防御:44
魔力:35 敏捷:15 幸運:25
【スキル】スライム強化、なつき度強化、勇敢
知恵の泉、魅了、同調、不器用
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