Tale21:頑固はよく揉んでおきましょう
足の裏に伝わる石畳の感触が、なんだか懐かしい。
視界に広がるのは、おとぎの国のようなカラフルな煉瓦造りの街並み。
「おー、ただいまって感じね」
「えへへっ、ただいまー」
唯一の懐かしくない要素、リリアバージョンのスラリアが腕を組んでくる。
あんまりくっついていると、仲良しさんみたいで恥ずかしい。
「……まあ、NPCの人たちはじろじろ見てきたりしないから、いいか」
大通りを行き交う人たちはほとんどNPCなのだろう、私とスラリアには目もくれていない。
私はともかくとして、スラリアの格好は老若男女問わずに出血大サービスだと思うのだけれど。
「どうしました?」
私の顔を覗きこむように、スラリアは首を傾げる。
「ううん、スラリアは可愛いなって考えてただけだよ」
「ぴゃっ!? お姉様も、とてもお美しいですっ……!」
顔は赤くなったりしないけれど、スラリアは恥ずかしそうに言った。
よく考えたら、これってなんだろう?
自分と同じ姿形を褒め合っているわけだから、傍から見たらナルシストの集いになるんじゃない?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「オージちゃん、こんにちはー」
「こんにちはー」
冒険者ギルドでは、やっぱりオージちゃんの窓口は空いていた。
オージちゃん、これでもちゃんと仕事しているって言えるのかな?
「おう、なんだか久しぶりだな」
いつもの三白眼で私を睨むオージちゃん。
おっと? もしかして、今回はいけるのではないか?
「――あと、オージちゃんと呼ぶな」
「うわぁ、なんだよ、惜しかったなぁ!」
「お姉様! もう少しですっ、あと三回ぐらいですよ!」
私とスラリアが騒ぎ立てる中、オージちゃんは大きなため息を吐いた。
ごめんね、賑やかで。
「マイルの娘の勉強依頼だが、期限が迫っているから行くなら早く行ってやれ」
依頼を受けてから達成せずにゲーム内時間で七日間が経過すると、その依頼は失敗扱いになる。
前回はミリナちゃんのお家に行く途中でPKされちゃったから、今回は行ってあげないと。
もしかしたら、長い時間待ってくれていたのかもしれないし。
「あとは、なにか追加の依頼を選びに来たのか?」
「えっと、武器屋さんを紹介してほしいです」
冒険者ギルドの周りには多くの武器屋がある。
その中でどのお店を選べばいいのか、いまいちわからないから聞きに来たのだ。
「武器屋? 新しい魔物にでも交換するのか?」
ちょっと、オージちゃん?
お姉様が私以外の魔物を連れ歩くなんてあってはならないんですけど?
などと、隣で喚くスラリアを黙らせる。
「違います。私が使える武器を探したくて」
私の答えを聞いて、オージちゃんは顎に手を当ててなにやら考えている。
目を隠したらいいんじゃないのかな、サングラスとかかけて……いやいや、余計に迫力が増しちゃうよ。
額に可愛らしい絵を描くのはどうですか? 恐くなくなると思いますけど。
私とスラリアが目線でそんな会話をしていると、考え事が終わったのか、オージちゃんは口を開いた。
「……どんな武器を探している?」
「えーと、まだ決めていません」
正直に言うと、オージちゃんは呆れたようにため息を吐く。
だって、なにがいいとかわからないから、お店の人に聞こうと思ってたんだもん。
「じゃあ、マイルのところの依頼が終わったら、ここに来い」
街の住所情報を飛ばしてくるオージちゃん。
冒険者ライセンスに浮かぶ文字列を見ると、南側の端の辺りを表していた。
これってどこですか、そう聞こうと顔を上げる。
しかし、さっさと行けと言うかのごとく手をしっしっと払われた。
疑問に思いながらも、私とスラリアは、オージちゃんにしつこく手を振り返してから、ミリナちゃんのもとに向かうのだった。
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【名前】リリア
【レベル】9
【ジョブ】テイマー
【使用武器】スライム:習熟度5
【ステータス】
物理攻撃:20 物理防御:40
魔力:35 敏捷:10 幸運:25
【スキル】スライム強化、なつき度強化、勇敢
知恵の泉、魅了、同調
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