27 お嬢様と筋肉ダルマと美少女ハーフエルフがご学友
「ところでアイヴィー、人員はどうするの?」
「あんた馴れ馴れしいわね……これから集めるのよ」
あ、やっぱりアイヴィーもぼっちなんだ、ちょっとだけ親近感沸くよね。ぼっち同盟だねアイヴィー。うんうん、と頷く俺をみてアイヴィーが「何考えてんだこいつ」みたいな表情をする。
さて、パーティ会場を改めて見ると彼女の言葉は正しいのだな、と思った。
学生たちはある程度固まっているのがわかる。今まで興味なくて全然見てなかったのだけど、ある程度まとまったグループでの会話を楽しんでいるように見える。
むしろ
「アイヴィーの言う通りなんだねえ」
「そうよ、だから一人でご飯を食べてるクリフは珍しかったのよ。ところでなんで
お嬢様からのクレームにはあえて反応せずに会場を観察してみる。
それでもぼっち……いや個々人で食事をしている、もしくは少ないグループで話をしている者もいなくはない。とはいえそんな数はいるわけではないな、とは思うのだけど。
パーティ会場を見物していると、突然後ろから声をかけられた。
「もしかして……学友探しですかな?」
振り向くとなぜか上半身裸でポージングをする男性が立っていた。キラリと白い歯が光る。金髪碧眼だが、印象に残るのはその筋肉、黙っていれば十分な色男なのに過剰なまでの筋肉しか印象に残らない。
「いえ、探していません」
見なかったことにして顔を背けると、なぜかその男はずずずいっと視界に入るようにポージングしたまま移動してきた。
「マッチョなこの肉体を探していましたね?」
「いえ、探していませんよ」
「探してないわ」
アイヴィーもやべーもん見ちまったな、という顔をしてその男から顔を背ける。
ポージングを変えて男は勝手に自己紹介を始める。
「私の名前はトニー・ギーニ。肉体の美しさを極めんとする男フゥッ!よろしくお願いするのですぞ!」
頼まれてもいないのに名前まで名乗ったトニーは、再びポージングを変えると、その豊かな胸筋をピクピクと痙攣させた。
うわあ……人の話を聞かないタイプだ。アイヴィーもその筋肉の脈動を見て気持ち悪っ! という顔になっている。
「そもそもあなた
流石に疑問に思ったことを聞いてみる。どう見ても
ふん!とポージングを変化させるとトニーは話し始めた。
「あなたは魔法を使うときに筋肉が必要ない、と申しますか」
「え? いやそんなことは言ってないんですが」
「健全な精神は肉体に宿るっ! フッ、そう私は精神の鍛錬のために肉体を鍛え、肉体は魔法の能力をさらに向上させる……これこそが私が編み出した
キラッと白く輝く歯を見せ、やり切った感満載のサイドチェストを決めるトニー。
うわあ……ドン引きしつつも俺は聞かなければいけないことを聞く。
「つまりトニーもぼっちなのね?」
「HAHAHA! 何をいうんですか、私にはこの愛する筋肉がある、筋肉だけが友達なのです」
「あ、ならいいです」
「すいません、見栄を張りました。ぜひ私と友達になりましょう」
素直に陥落するトニー。実は案外いいやつなのかもしれない。
「フッ……皆私のこの肉体を見て、距離を置いてしまうのでね……ハァアッ!」
あ、だめこういうやつ、前言撤回。
「上半身裸だからじゃないの?馬鹿なのあんた?」
アイヴィーが俺の言いたいことをちゃんと言ってくれた。ありがとうアイヴィー、やっぱり君は友達だよ。
ツッコミが効いたのかトニーがちょっとしょぼんとした顔になってる。
「あの……ご学友探しですか?もしよければ……」
後ろから声をかけられたので振り返ると、そこには小柄な藍色の髪をした少女が立っていた。その耳は、少し尖っている……
「私はこの聖王国出身のアドリアーネ・インテルレンギと言います。
アドリアーネは少し恥ずかしそうに俯きながら自己紹介をしてくれた。
「僕はクリフ・ネヴィル。サーティナ王国からきました。クリフでいいよ」
「クリフ……よろしくね。私のことはアドリアって呼んでください」
アドリアはニコッと笑うと、俺に手を差し出してきて俺たちはそのまま握手をした。緑色の瞳と可愛らしい外見で少し小動物的な印象を与える子だな、と思った。
「私はトニー・ギーニ。トニーと呼んでくれたまえ、ハァアッ!」
ポージングを始めたトニーにビクッとしながらも、アドリアはおずおずと挨拶を交わした。
「私はアイヴィー・カスバートソンよ。帝国貴族だけど、今は学生だから気にせず仲良くしましょうね」
「貴族様なんですね、アイヴィーさん。よろしくお願いします」
アイヴィーもにっこり笑ってアドリアと挨拶を交わす。和気藹々と話が弾む俺たち。
これから学生生活をスタートするにあたって、結構面白いメンバーが揃ったんじゃないか?とさえ思う。
帝国のツインテール貴族令嬢アイヴィー。
謎の肉体派
そして美少女
これから学友を増やすにせよ、最初の一日目で四人も友人ができたのだ、ぼっち学生にならないでよかった。
できれば何事もなく卒業まで静かに魔法の勉強と冒険ができればいいな、と思っていたその矢先。やはりフラグは簡単に回収されてしまう、と言うことを思い知らされたのであった。
「あれ?かつての名門貴族様がここにいらっしゃるとは……」
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