20 混沌の戦士(ケイオスウォリアー)05
「危険すぎないか?」
「予想が正しければ、これで形勢をひっくり返せると思うんです」
「そうかもしれないが……」
俺の作戦を聞いたカルティスは露骨に困惑の表情を浮かべた。無茶な作戦、というのは理解しているのだが現状パーティが持てる戦力を総動員しても傷一つ付かないアルピナを倒すにはこれしかない、と思った。
「あー、もうわかったよ。ただな絶対に死ぬなよ」
カルティスが仕方ないな、という表情で再びセプティムたちの援護に走っていった。
アルピナは目の前で逃げ続けるセプティムやジャジャースルンドを<<
ベアトリスは頼みの綱になっている
「そ、そんな危険なこと納得できる訳ないじゃないですか!」
まあ、ベアトリスのこの反応は正直いうと予想できた。
「でもやってみる価値はありますぜ」
おっと、どこかのアニメみたいなセリフになってしまったけど、これでダメならさっさと撤退した方がいいと思っている。
「……わかりました……」
渋々承諾するベアトリス、納得はしていないだろうが今のところなんとか作戦を立てられているのは俺だけだ。これに乗っかるしかない、というのが現状だと思うしな。
「危ないと思ったら私はあなたを無理矢理でも止めますからね」
「くそっ……打開策がなさすぎる」
セプティムは焦っていた。
過去に戦った
挙げ句の果てに絶対防御能力まで備えている。こんな敵に遭遇したこと自体が初めてだ。今のところなんとか攻撃は避けることができている、が
「力が足りないのか……認めたくないのだが……」
このままではジリ貧。そう思って焦りばかりが募っていく。
「混沌とはこういうものなのか……」
ジャジャースルンドは正直驚愕していた。
実は彼は
しかしこのアルピナという
それが末恐ろしい。逃げることは簡単だ。だが今後混沌と戦うときにこのままでは恐怖しか感じなくなってしまう。
「それだけは避けねばならんな」
独り言を呟くほど、今ジャジャースルンドは追い詰められていた。
「二人とも! 援護を頼みます!」
絶望感を感じつつあったセプティムとジャジャースルンドの耳に、クリフの声が響く。
驚いて声の方向を見ると、小剣を構えたクリフ=俺がアルピナに向かって突進していくのが見えた。
「クリフ! 何を!」
「小僧! 無謀だ!」
驚きで目を見開く。たった八歳の子供があの強力な
あっけに取られるも戦士としての本能が彼らをすぐに行動させた。セプティムが
「鋭い攻撃だけど、私の防御能力は崩せないわよ?」
そこへジャジャースルンドの
さらにベアトリスの
アルピナは優越感に浸っていた。
今回目の前に現れた冒険者と
この黒い紋様は
欠点とすれば、手や足など面積のそれほど大きくない部分に展開するのが難しいこと、視界外の攻撃に対して反応ができない点だ。
「馬鹿正直に視界の中にある程度入ってくれるのは有り難いわね」
三日月刀の戦士は視界ギリギリを狙って接近してくるため、その度に視界内に入れて対処すれば問題にならない。唯一力負けしそうだった
紋様の防御能力は紋様が攻撃を受け止めるので、
このまま防御を固めつつ、距離をとって<<
「後はあの可愛い魔道士の坊やを可愛がってあげるだけね……」
涎が出てしまう。あんな子供をいたぶる機会はここ何十年も存在していなかった。痛めつけた後にこちら側に引き込んで永遠に可愛がるのも楽しいだろう……。
そこで気がついた。子供が視界にいない。先ほどは戦士に何か声がけをして走っていったが、戦士やそのほかの人間からの攻撃に対処するために放置した。
「しまった、どこへ……」
「ここですよ」
後頭部に何かが当たる感触。
アルピナの視界が光で弾けた。
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