第60話 望月の暗躍
「根岸さん!!」
「どうしたフィロメオ。早朝からのこの流れは2回目だぞ」
ノックの返事をする前から、またもやフィロメオが皇城の俺の部屋に入ってきた。
「どうしたじゃないです!ゲンベルク帝国、虎の子の竜騎士団が壊滅状態だと報告がありました!そんなこと出来るのは根岸さんしか考えられません!!」
フィロメオは肩で息を息をしながらこちらの出方を窺っている。
「虎の子の竜騎士団。面白い言い回しをするな。流石はフィロメオだ。もう日本語は完璧だな」
「えっ、いや、そんなことは……。って一大事なんですよ!!」
「一大事かもしれんが、今回の件も俺は無関係だ。お前は竜騎士団の練兵場には行ったのか?」
フィロメオは気不味そうな顔をする。
「……いえ、報告を聞いて真っ直ぐここに来ました」
「先ずは情報を集め、総合的な判断を下すのも上に立つものの役目だぞ。直感で行動することが正解の場合もあるがな」
「……はい」
「まあいい。竜騎士団の練兵場に案内しろ」
「は、はい!!」
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竜騎士団の練兵場は酷い有様だった。報告通りの壊滅状態。広大な練兵場にはドラゴンやワイバーン、そして騎士達があちこちに打ち捨てられたように横たわっている。
「……酷い」
フィロメオが呟いた。その呟きを嘲笑うかのような声がする。
「いやー、モチ太郎はやっぱり最強だなぁ!!よしよし」
練兵場の中央で寝そべるのは黒龍。その横にいるのは長身の女。大きなブラシで黒龍の顔を磨いている。
「望月さん!!」
「おお、フィロメオに根岸じゃないか!昼飯でも持ってきてくれたのか!?もう私は腹ペコだぞ!」
「まだ朝だぞ。一体何時からやっているんだ」
「うーん、夜明けぐらいだな。私がモチ太郎と鍛錬をしていたら、こいつらが絡んできてな。軽く揉んでやった」
「軽くって、竜騎士団が全滅じゃないですか!!」
フィロメオが望月を糾弾する。
「えっ、こいつら死んでるのか!?」
「いえ、死んではいないと思いますけど……」
フィロメオの登場に気付いた竜騎士団の団員達がなんとか身体を起こして始めた。今更面子もないだろうに、少しでも陛下の前で取り繕うと頑張っている。
「なんだ!生きてるじゃないか!びっくりさせるなよ。生きてさえいれば、なんとでもなる」
相変わらずの脳筋発言だ。
「しかし、ドラゴンに騎乗する為の魔道具もことごとく壊れています!」
望月が大きく溜息をついた。
「馬鹿だなー、フィロメオは。あんなものに頼っているからこいつらは弱いんだよ。よし!私が鍛え直してやる!!」
何かを察したのだろう。それまでは立っているのもやっとだった騎士団員達が一斉に背筋を伸ばした。
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