第58話 エロフの暗躍
「根岸さん!!」
「どうしたフィロメオ。朝から騒々しいぞ」
ノックの返事をする前からフィロメオが皇城の俺の部屋に入ってきた。
「どうしたじゃないです!貴族の間にこれを流行らせたのは根岸さんでしょ!?何故か皇族おすすめの逸品ってことで爆発的に広まっています!!」
フィロメオはルクハルトが作った性魔道具を手にしている。
「それは誤解だ。最近、ルベリートが帝国にやって来たのは知っているな?土産だと言ってそれと同じ性魔道具を大量に持ち込んだんだ」
「あのエロフ……。でもそれでは皇族おすすめとはならないでしょう?」
「まぁ待て。ちょうどその時、お前の姉2人が居合わせたんだ。特に下の姉、フェルミーナの方が興味を示してな」
「……姉上が」
「ルベリートがそれを利用して各所に売り込んでいるのだろう」
「こんな不安定な時期に貴族の間で変な噂が流れるのはちょっと見過ごせません」
「ルベリートなら貴族街の宿に居る筈だ。案内しよう」
「お願いします!」
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帝都は皇城を中心とし、それを貴族街が取り囲むように広がっている。一般の帝国民はさらにその外側に住んでいる。高級なレストランや宿のような一般の帝国民には縁のない店も、やはり貴族街にある。
ルベリートは帝都でもかなり高級な宿に部屋をとっていた。地球で荒稼ぎした金を宝石などに替えてこちらに持ち込み、豪遊しているのだ。
「ルベリート、いるか?」
ルベリートの泊まる部屋に到着し、一応ノックして声を掛ける。
「うーん、留守でしょうか?」
ルベリートのことをよく知らないフィロメオが言う。
「いや、ルベリートは夜型だからな。まだ部屋でダラダラしている筈だ。合鍵で入ってしまおう」
「ええ、いいんですか?女性の部屋ですよ?」
「奴に恥ずかしいとかはないからな。平気だ」
支配人から借りた合鍵でドアを開けて部屋に入る。さすが高級な宿だけあって中は広々として家具の質もいい。
「いませんね」
「寝室だろう。いくぞ」
寝室のドアを開けると下着姿のルベリートがまだ寝惚けた様子でベッドの上にいた。
「……おっ、ネギシか。ついにワシと寝にきたか?今日はあの死神様もおらんようじゃし、今からでもええぞ」
地球にいることの多いルベリートは随分と流暢に日本語を話す。
「魅力的な提案だが、今日は別件だ」
「というと、その顔を赤くしとる皇帝陛下絡みかの?」
ルベリートはわざと胸元を強調してフィロメオに見せびらかした。
「……その魔道具のことで」
「かかか!ちゃんとこっちを見て話したらどうじゃ?皇帝陛下」
ルベリートがからかう。流石にまだ、ルベリートの色香はフィロメオには早いらしい。
「……あの魔道具を皇族の名前を使って貴族に流行らせるのをやめてください」
「そーんなことでわざわざ来たのか。皇帝陛下はまだまだ分かっとらんのう。どれ、ワシが一つ教育をしてやろう」
ルベリートが身体を起こし、得意げに話し始めた。
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