第24話 地球の文化

「あれ?パイセン戻ってたんすね」


新宿の事務所でルベリートのリアクション動画を編集していると、和久津が入ってきた。


「こちらの方は?えーっと、エルフ!?」


「ああ、よく分かったな。エルフのルベリートだ」


"ルベリート、こいつが和久津だ"


"おお、この御仁が!"


ルベリートは勢いよく立ち上がり、和久津に握手を求める。


「わわっ!ども!和久津といいます」


"尊敬していると伝えてくれんか?"


ルベリートは握手した手をブンブン振り、なかなか離そうとしない。


「お前のことを尊敬しているそうだ」


「えっ、自分何かしましたっけ?」


「さあな」


和久津は困惑顔だ。


「実は新たなコンテンツを考えたんだ。和久津の意見も聞きたい。観てくれないか?」


「また、血生臭いのですか?」


和久津が身構える。


「いや、今度は違う。このルベリートに地球の文化を紹介してそのリアクションを動画にする」


「それはいいっすねー!エルフのルベリートさんが出てくれるだけで既にキラーコンテンツっすよ!」


「だろう?では早速、試聴会としよう」



######



「ウチじゃないっすか!」


和久津が立ち上がって叫ぶ。


「ああ。なかなか綺麗にしていたな。感心したぞ」


「あっ、ども。って!どうやって入ったんすか!?」


「俺に【変身】のスキルがあるのを忘れたのか?」


「うわぁ。やっていいことと悪いことがあるっしょ!」


「やれることをやったまでだ」


「ベストを尽くしたみたいに言う!」


部屋に嬌声が流れ、モニターにはエロ動画に釘付けとなっているルベリートの表情が映し出される。


「ちょっと!!ルベリートさんに何をみせてるんすか!」


「和久津のエロ動画アーカイブだ。綺麗にカテゴリ分けされていたな。感心したぞ」


「あっ、ども。って!地球の文化ってエロのことすか?」


「ルベリートの首を見てみろ。こいつは色欲の神様の加護を持つ。エロに興味を持って当然だろ?」


「それはそうっすけど」


「こいつは黛に自分のエロを馬鹿にされてな。それならと地球のエロを見定める為にやってきたんだ。結果、完全に地球、いや日本のエロ動画にハマってしまった」


ルベリートはうんうんと頷く。なんとなく伝わったらしい。


「今後はアダルト動画の撮影現場にも行ってみたいそうだ。和久津、頼むぞ」


「そんなツテないっすよ!!」


「落武者チャンネルとしてAVメーカーにコラボ企画を持ち掛けろ。絶対に上手くいく」


「流石にそこまでやったら協会に呼び出されちゃいますよ!リリパットチャンネルの時も大変だったんすからね!!」


「その件は大丈夫だ。こちらに干渉するなら異世界側のダンジョンを封鎖すると脅したからな。それに、行ってみたいだろ?撮影現場」


「……はい」


それ以上、和久津が抵抗することはなかった。

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