第5話 入村

「黛、見えるのか?」


「見える」


"何故俺には見えない?"


"村の周囲に【隠蔽】の魔道具がありまして"


"何故黛には見える?"


"女性らしさを犠牲に"


果敢なグランピーを黛が迷いなく蹴り飛ばした。何故伝わるのかは謎だ。


グランピーと黛曰く、もう200メートル程のところにリリパット族の村があるらしいが、何処のことを言っているのか全く分からない。360度、ただの森だ。


"では、儂はこの辺で"


"案内頼むぞ、グランピー"


"せっかくのデートを邪魔するわけには"


"俺達は全く気にしない。大丈夫だ"


一通り悲観にくれた後、グランピーは開き直ったようだ。


"了解ですじゃ!このグランピー、見事村を案内してみせましょう!"


"お、おう"


黛に目配せすると、すっとその姿は見えなくなった。念には念をだ。そしてマジックポーチからビデオカメラを出して構える。


"よし行こう"



######



【隠蔽】はある程度近づくと効果を失うのだろう。村は目の前に唐突に現れた。しっかりとした木の塀に囲まれた村はとても来訪者を歓迎する雰囲気ではない。リリパット族というのは警戒心が強いようだ。


入り口では一丁前に武装したリリパット族が2人、こちらに槍を向けている。


「למה הגעת!」


「זה סיור」


「אל תהיה טיפש!」


「אני רציני」


門番とグランピーが何かを言い合っている。とてもリリパット族の大賢者に対する態度ではないな。


"おい、小さき者。村へ入れてはくれないか?"


"【念話】!?怪しい奴め!ホラ吹き野郎と一緒に帰りやがれ!"


元気な門番だが、子供がごっこをしているようにしか見えない。


"そう怒るな。今日は土産を持って来たんだ。これをお前達にやろう"


マジックポーチからダンジョンのフロアボスの魔石を数個取り出し、門番に見せる。


"……"


「אין סכנה」


「תשאלו את ראש עיריית הכפר」


グランピーが何か言うと、門番の1人が村の中へ入って行った。


"大丈夫なのか?"


"大丈夫ですじゃ。村にとって魔石は重要。それに儂がおりますしな!"


"頼むぞ。ホラ吹きグランピー!"


"何故それを!?"


程なくして、俺達は村へ入ることを許された。

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