第51話 面倒くさい
はぁぁ。めんどくさいなぁ。なーんで僕が働かなくちゃならないんだよう。富沢さん、人使い荒いよなー。
「目々野さん、奴が移動しますよ」
構成員Aが言う。名前は忘れた。昔からいるから顔は分かるんだけど、いつも名前がわからない。顔に名前を書いておいてほしい。
「落武者はダンジョンを出るみたいですよ。奴が1人になるチャンスでは?」
構成員Bが囃し立てる。名前は忘れた。こいつ新入りの癖に生意気だなー。
「わかったわかったよー。追えばいいんでしょうう」
今回の標的は根岸なんとか。一度富沢さんが挨拶という名の脅しをかけたんだって。そして今日は回収の日。レアな加護持ちだから必ず連れて来い!奴はカオスサーガに必要な人材なんだ!だってさ。だったら富沢さんが自分で来ればいいのにね。まぁ、富沢さんの加護は敵味方見境ないから捕獲には向いてないんだけどさぁ。人にお願いする時はもっと違う言い方があるよね?
「でもさー、奴が転移石で何処の階層に行くかわかんないじゃん?どうやって追いかけるのよー?」
なんでこいつ等はそんなことも分からないんだろ。本当に使えないなー。馬鹿ってやだねー。
「それは大丈夫です。午後、奴は第5階層と第10階層のフロアボスを周回することが分かってます。ここ一か月ずっと変わってません」
「そーいうことはさー、先に言わないとわかんないじゃん?」
「事前のメールには載せておいたんですが……」
構成員Bが不服そうだ。本当に生意気だなー。
「僕は!お前達と違ってすごーく忙しいの!一々メールの細かいところなんて見てられないの!大事なことはちゃんと分かるように伝えないと、意味ないよね?」
「……すいません。気を付けます」
構成員Bはやっとしおらしくなった。ここは僕も大人になるとしよう。
「もういいよ。奴行っちゃったし。で、どっちから?第5階層でいいの?」
「はい。第5階層で大丈夫です」
「はぁぁー、面倒臭いなぁ」
「目々野さんお願いします」
構成員Aが頭を下げてきた。Bも遅れて下げた。
「さっさと終わらせて帰るからねー」
あー、やだやだ面倒臭い。これが終わったら3日は布団から出ない。決めた。僕はただ怠惰に過ごしたいのに、有能さ故に周りがそれを許さない。僕の才能がそうさせない。あぁ、辛い。
「目々野さん、行きますよ」
「わかってるって!!」
はぁ、面倒臭い。
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