第21話 彼女の目的

「何が目的だ」


俺は大鎌少女の隣りに座り、平坦に尋ねた。コイツに悪意があるならもっと別のアプローチもあった筈だ。まだ事を荒立てるタイミングではない。


「……」


そう簡単に答える気はないらしい。


「昨日、どうやって見ていた?」


「この目で」


ふざけてやがる。話すつもりはないってことか。


「見ていたのなら分かるだろうが、俺の場合は召喚オーブでゴブリンを呼んだだけだ。別に何もやましいことはない」


「脅しにきたわけじゃない」


見た目より大人びた話し方だ。冷淡といってもいい。


「じゃあ、なんだ?」


「タイプ」


「……どういう意味だ?」


「見た目がタイプだったからついて行っただけ」


なんだこいつは。


「いつからいた」


「ボス部屋の前から」


「あそこにお前はいなかった筈だ」


「いた。見えなかっただけ」


「わからんな。どういうことだ?」


「話す」


そう言って少女は話し始めた。



######



黛奈々。そう名乗る少女は自分の加護とその特殊能力について語った。彼女に加護を与えた神様は死の神様。つまり死神だ。首の刻印もわかりやすく髑髏だ。


で、問題の特殊能力がとんでもない代物だった。生き物の首と引き換えに、自分と身に付けているモノをほぼ完全に消すことが出来るらしい。姿は見えない、音も匂いもしない。完全なチートだ。


「どれくらいの間、消えていられるんだ?」


「首を捧げた生き物の格による。ゴブリンだと1秒」


「自分で自由に発動できるのか?その能力は」


「出来る。時間は貯めておけるし、発動も停止も自由」


「昨日は随分長い時間消えていたようだな」


「奮発した。また貯めないと。いっぱい首はねる」


こいつの能力の怖いところは捧げる首が生き物ならばなんでもよいところだ。つまり、ダンジョンのモンスターじゃなくてもいい。多分人間でも問題ない。


「姿を消したまま首をはねられるのか?」


「それは出来ない。姿を現さないと生き物には干渉出来ない」


「それでも暗殺者としてはほぼ完成されているな。こんなこと俺に話して良いのか?」


「タイプだから問題ない」


「俺の加護については話さないぞ?」


「別にいい。だいたい想像できる」


「言ってみろ」


「幸福の神様かなにか。多分ドロップアイテムに補正がかかる特殊能力を授かっている」


「何故そう思った?」


「召喚オーブはレアドロップ。市場にも出回ってないし、自分で落とさないと手に入らない」


「ふん」


「それにフロアボスが落としたスキルオーブも見たことないものだった。あれは相当にレア」


「だから協会の前で張っていたのか?」


「そう」


「よく見てるな」


「タイプだから」


その時、スマホが震えた。見ると鑑定結果が出たらしい。


「鑑定が終わった」


「楽しみ」


こいつ、ついてくる気か。

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