第18話 第5階層

「グギャー!」「ワォォーン!」


ゴブリンとコボルトの威嚇を無視してショートソードで撫で斬りにする。その様子を見て後続のゴブリンとコボルトが怯む。つまり、お好きにどうぞってことだ。踏み込んでまた切り捨てた。4体は次々に煙になり、魔石が4つ転がった。第5階層はモンスターがパーティーを組んで出てくる。


「しけてんなぁ」


普通にモンスターを倒しても魔石しかドロップしない。ゴブリンやコボルトだと一個100〜150円程度だ。初心者エクスプローラーが第5階層のクリアを急ぐわけだ。


フロアボスを倒して強力なスキルを手に入れればダンジョン攻略は飛躍的に進む。それによって稼ぎもどんどん増える。エクスプローラー一本で生活するには第6階層より先に進まなければならない。というのが一般的だ。


俺はドロップアイテムに恵まれる加護があるので低層でも問題なく稼げるが、どうせならもっと稼ぎたい。


「グギャギャギャ!」


ゴブリンが3体、角から躍り出てきた。盾持ちゴブリンが前に出て、その後ろから槍持ちゴブリンが2体、此方の様子を伺っている。


「ミドリムシがエクスプローラーの真似事か?」


「グギャー!」


「それでヘイトを集めているつもりか?」


「ギギギ!」


盾持ちの後ろから槍が突き入れられる。ショートソードで刃先を払うと体勢を崩して盾持ちとぶつかった。


「ははは!やる気はあるのか!遊んでないで殺しに来いよ!」


怒り狂った盾持ちが盾を突き出して向かってくるが、ショートソードの腹で受け止め、今度は全力で押し返す。盾持ちは後ろで構える槍持ちの槍に刺され、絶叫して暴れる。


完全に連携の崩れたゴブリン達をさっさと処理すると、魔石3個と初級ポーションが2個。やはり性悪の神様は素晴らしい。フロアボスのスキルオーブにも期待だ。



######



第5階層に入って4時間ぐらい経った頃、フロアボスのいる大部屋が見えてきた。大部屋を通らないと第6階層への階段には到達出来ない。


大部屋の前では若いエクスプローラーのパーティーが2つ、順番待ちをしていた。フロアボスが倒されるか、エクスプローラーが全滅するかしないと大部屋は開かない。


パーティーに近づいて挨拶すると、どちらのパーティーも愛想よく返してきた。こんなところで険悪になっても仕方ないのでちょうどいい。


30分ぐらい待った頃、大部屋の入り口がズズズと開いた。中は見事に空っぽだ。きっとモンスターハウスと同じ様にエクスプローラーが入ってからフロアボスが現れるのだろう。


先に待っていただろうパーティーが声を出して気合いを入れ、大部屋へと入って行った。


大部屋の入り口が閉まる音が響き、その後は静寂が広がる。


「……あのー」


若い4人パーティーの内の1人が話しかけてきた。線の細い男だ。


「なんだ?」


「急に話しかけてすいません。違っていればすいません。クーラーボックスの人ですか?」


「違うな」


「……すみません。何度か見たことあったんですけど、勘違いだったみたいです」


「誰にでも間違いはある。気にするな」


「ありがとうございます!ところで、お一人で挑むんですか?」


「そうだ」


「やっぱり加護持ちだと強いんですね。羨ましい」


首の刻印に視線を感じる。


「なんの神様の加護か聞いても良いですか?」


「釣りの神様だ」


「「「「えっ!」」」」


パーティー全員が声を上げる。


「何かおかしいか?」


「……いえ、そんなことないですけど、」


後ろの3人が小声で何か言い合っている。


「そんなことより、準備しなくていいのか?そろそろ順番が回ってきそうだぞ」


俺がそう言った少し後に、大部屋の入り口が開いた。


「そうですね。行ってきます!お互い頑張りましょう」


そうだな。俺のやり方で頑張ろう。

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