第12話 ゴブゴブゴブ

「はぁはぁはぁ」


俺は第2階層を走っていた。


後ろからゴブリンが3体、追って来ている。


「はぁはぁはぁ」


もうこれ以上道はない。行き止まりだ。


俺は壁を背にしてゴブリン達と対峙する。


先頭のゴブリンがゆっくりと錆びた剣を構えた。俺の手にショートソードはない。


「ゴゲゲゲゲ!」


追い詰められた俺を見て、笑っているのだろう。こいつらモンスターは嗜虐的だ。俺をいたぶるのが楽しみなのだ。


「ゴギャー!」


先頭のゴブリンが剣を振り上げた。


そろそろよいか。


「ゴブ、ゴビ、やれ!」


「「ギギギ!」」


後ろのゴブリン2体が先頭のゴブリンの脚を切りつけた。両脚の腱を切られたゴブリンはそのまま地面に倒れ込み、喚いている。


「ははは!おい、ミドリムシ!何が起こったかわかるか?」


ゴブリンは這いつくばりながらも此方を威嚇する。


「ゴブ、ゴビ、こっちへ来い」


ショートソードを持ったゴブリン2体が俺の方へやって来て跪く。


「ゴギャゴギャゴギャ!」


裏切り者。そう叫んでいるのだろうか?


「ゴブとゴビは最初から俺の仲間だ。お前が勝手に味方と勘違いしただけだ」


「ゴ、ゴギャ」


ゴブリンの顔から表情が抜け落ちる。


俺はゴブからショートソードを受け取った。


「充分絶望しただろ。もう死ね」


首を切られたゴブリンは煙になり、そこには魔石と召喚オーブが残った。


「よし!ゴブ珠ゲットだぜ!」


「「ギギギ!」」


俺は先の階層に進むのを一旦取りやめ、第2階層で召喚オーブ集めをしていた。通常だとまずドロップすることのない召喚オーブだが、性悪ムーブがハマると1割ぐらいの確率でドロップすることが分かっている。


ただ、普通に罵倒したりする程度ではドロップしない。もっと性悪なムーブが必要なのだ。


そこで俺が考えたのが、裏切りのゴブ作戦だ。


やり方は簡単。召喚オーブで召喚したゴブリンを他のゴブリンと合流させる。そしてその集団の前に武器を持っていない状態で俺が現れる。


ゴブリンは単純なので武器を持たない人間を見つけると必ず襲い掛かってくる。俺はマップを見ながら行き止まりまで走り、後はさっきの通りだ。


「よし。目的は達成だ。ゴブ、ゴビ、戻れ」


ゴブとゴビの身体が光って消え、手元の召喚オーブに熱が籠った。ゴブとゴビというのは俺が召喚したゴブリンの名前だ。最初に手に入れたのを、ゴブ。次に手に入れたのはゴビと名付けた。今回のはゴバと名付ける予定だ。


さて、もう第2階層でやることはない。当初の予定より大分遅くなったが、次は第3階層だ。

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