第11話 もう一つの目的

俺は五条を第二階層の転移石にまで護衛し、ついでに初級ポーションを10本ほど売りつけてから見送った。


初級ポーションならサークル内ですぐに捌けるらしく、むしろ感謝された。なんでも100人を超えるサークルらしく、他の大学とも交流があるので全く問題ないらしい。


ドロップアイテム目当てだったが、良い拾いモノをした。情けは人の為ならずだ。もちろんエクスプローラー用アプリ「冒険しよう!」でフレンド登録もさせた。抜かりなし。


さて、五条と一緒にダンジョンを出てもよかったのだが、一つ試したいことがある。


俺はマップを見ながら人が来ないであろうどん詰まりまでやって来た。そしてポーチから何やら文字の書かれた珠を取り出した。


召喚オーブ。


五条を助ける時に倒したゴブリンの一体からドロップしたものだ。


スキルオーブのようにスキルを覚えるわけではない。その代わりに、オーブを落としたモンスターを召喚出来るらしい。


ごく稀にモンスターからドロップするらしく、いくつかの事例が協会のサイトに載っていた。ただ、所有者からの情報提供が乏しいので詳細は載っていない。


使い方は簡単。そのモンスターのことを念じながらオーブを握るだけでいい。


周囲に気配がないことを確認し、ゴブリンのことを念じながらオーブを握る。身体から力が抜けていき、オーブが輝き始める。


思わずオーブを手放すと、オーブからより一層強い光が放たれ、それが収束するとともに見慣れたやつが現れた。


ゴブリン召喚成功だ。


「よう。俺の言葉は分かるか?」


「ゲギョゲギョ!」


ゴブリンは声を出しながら頷く。


「よし、これを振ってみろ」


俺がショートソードを地面に転がすと、ゴブリンは恐る恐る手に取る。


「振るんだ」


「ギギ!」


ゴブリンはショートソードを振り回すが、まるでなっていない。俺だって素人だが、それでも分かる。酷いと。


俺はスマホを取り出し、Youtobeで適当な剣道の動画を探してゴブリンに見せる。


「ギギギ!」


分かった!と言うように声を上げ、ゴブリンはショートソードを大上段から振り下ろす。さっきより随分とマシになっている。召喚オーブで呼び出したゴブリンは他の奴よりも賢いのかもしれない。


ゴブリンに一通り剣道の形を練習させた後、俺は召喚オーブを手に取って、戻れ!と念じた。


ゴブリンの身体から光が放たれ、次の瞬間には消えた。なんとなくだが、召喚オーブに熱が籠った気がする。


さて、もう一つ実験だ。


俺はもう一度、ゴブリンのことを念じながら召喚オーブを握る。強い虚脱感に襲われるが、今度はオーブを落とさない。


オーブから強い光が放たれ、ゴブリンが現れる。


ゴブリンにショートソードを手渡し、振れと命じる。


するとどうだ。ゴブリンの振りはスムーズ。つまり、召喚オーブで召喚するゴブリンは同じ個体、もしくは記憶や経験を受け継いだ個体ということだ。


「これは悪事が捗る」


俺は思わず声を上げてしまったのだった。

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