第276話○早緑美愛の冬はさみどりいろ最終回は驚く話ばかり!
今日は、まず、昼過ぎから太田さん立ち会いの上で、圭司と一緒にテレビ番組情報誌「週刊テレビ案内」のインタビューを銀座にある東京テレビ通信社の本社で受けた。インタビュー自体はとても楽しくやりとりしたものの時間がかなり押してしまって、フェスのリハがギリギリのタイミングでの入りになってしまった。
本当は太田さんの社用車を関係者駐車場に止めた上で、通用口から入るはずが、関係者駐車場に止めている時間がないということで、太田さんの社用車を井の頭通りに面したビルの正面入り口に付けてもらって、私だけ降車、正面入り口から客席を経由して、そのままバックステージへ周り、私のパートの段取り確認とリハをすることに。本当は渋谷シアターアリーナの中を少し見学するはずだったんだけど、残念ながら時間がなくて断念。フェスの当日も直前まで予定が詰まっているからゆっくり見るのは、私のライブまでお預けだね。しかもリハを圭司に見てもらうはずが、そんな感じでバタバタだったので、結局、圭司と太田さんは渋アリの前にあるコインパーキングに止めた社用車の中で時間を潰すことになってしまった。
緊張しながら迎えたフェスのリハは、無事に終わった!あんなすごい人たちと同じ事務所で、しかも一緒に歌えるって、本当に貴重な機会。歌う順番が最後から7番目というのはドキドキなんだけど、近藤さんからOKをもらえたので、あとは慢心せずに頑張るだけ。今日のリハは各種撮影班もいたんだけど、「週刊テレビ案内」のインタビューで写真撮影されることもあって、私はさみあんモードのままだったからちょうど良かった。
そして、いまは、再び太田さんの社用車で圭司と一緒に文明放送へ向かっているところ。今日は、早緑美愛の冬はさみどりいろの最終回があるんだよね。これまでは21時15分から15分の番組だったのだけど、今日は最終回特番ということで21時から30分となっている。リハのあと、私はウイッグを取り忘れてそのままコインパーキングへ向かってしまったんだけど、歩いている人がいなかったからばれなくて良かった。
いつものようにディレクターの
「みなさん!こんばんは!早緑美愛です!ついに私のラジオが最終回です。なんか、あっという間に時間が経って、気がつけば最終回って早いですよね。今日はほかの曜日と同様に最終回30分拡大スペシャル!最終回ものんびりまったり、頑張りますので最後までお付き合い下さい!……早緑美愛の冬はさみどりいろ、この番組は浜松町の文明放送をキーステーションに全国21局を結んでお送りいたします。」
『CMはいります。』
トークバックの指示でカフを下ろす。
『早緑さん、最終回でもっとガチガチかと思いましたけど、リラックス出来ていいですよ。いまみたいな感じで行きましょう。』
私はいつものように手を上げる。
『CMあけます。』
戸城さんからのトークバックで再びカフを上げる。
ここからは届いていたメールをできる限り読もうというメールスペシャル。読み切れないくらいのメールがたくさん届いていて、本当にすごいよね。
「あっと、もう15分ですね。後半もまだまだ続きますのでそのまま聴いて下さいね!」
『CMはいります。』
カフを下ろすとスタジオの扉が開く。何だろう?と思ったら圭司がやってきた。
「あれ?雨東さん?」
「ここからは俺も出演するよ。」
えっ!?台本に書いてないよ!?
『CMあけます。開け冒頭、雨東さんの紹介をして下さい。』
私は慌ててカフを上げる。
「はい、そんなわけで早緑美愛の冬はさみどりいろ最終回スペシャルをお届けしていますが、ここでスペシャルなゲストが来てくれました!自己紹介どうぞ!」
「皆さん、こんばんは。雨東晴西です!」
「ゲストは雨東さんです!」
「今日は、文明放送さんから一通のお手紙をもらいまして、それを代読させていただくことになりました。」
「ええっ!?」
「じゃあ、読みますね。『皆様こんばんは。文明放送コンテンツコミュニケーション局長の吉田と申します。さて、本日、惜しまれつつも早緑さんの番組が終了するわけですが、多くの皆様からのリクエストを頂戴しました。番組編成を行っております、コンテンツコミュニケーション局で慎重に検討した結果、このたび、4月8日23時から15分の番組へ早緑さんに出演いただくことが決まりました。引き続き、文明放送でのレギュラー番組をよろしくお願いいたします。』だそうです。早緑さん、レギュラー番組決定おめでとう!」
「えっ!私のレギュラー番組……。」
ああ、事故になっちゃうから黙ってちゃいけないのにダメだ涙が出てきた。
「はいはいはい!こんばんは!文明放送アナウンサーの
「神嶋さんありがとうございます。」
「いえいえー。雨東さんはまだ不慣れだと思いまして、突然すみません。えーと、それで単なる場つなぎですと面白くないということで、私から番組名を紹介させていただこうかと思います。」
「お願い……します……。」
「早緑さんがすっかり喜びの涙、という感じですが、番組名を聞いて実感して下さいね。では、番組名を発表します!4月8日金曜日、23時から始まる新番組のタイトルは『早緑未亜・雨東晴西
……えっ!?
「ちょっと待って下さい、えっ、私の名前も入ってるんですか!?」
「はい、確かに入っています。番組の概要を読み上げますと『多くの人に愛されるアイドル早緑美愛と新進気鋭の作家雨東晴西の婚約者ふたりが、優しく、甘く、時にはのろけながらお届けする15分』と書いてあります。」
「ええっ!?私も出演するんですね!?」
「そうですね、出演者欄には『早緑美愛・雨東晴西』と書いてありますね。」
もしかして、圭司も聞かされてなかったのか!
『すみません、私から皆さんへ口止めしてました!』
もう、
「はい、いまのやりとりを聞いていて復活しました!」
「早緑さん、雨東さん、いまの感想を一言ずつぜひ。」
「まさか雨東さんと一緒にラジオが出来るなんて、すごい嬉しいです!」
「それは私も同じですね。いきなり文明放送でレギュラーなんて、本当に嬉しいです。」
ここからしばらく神嶋アナの進行で新番組に関する話題を続ける。
『ラストCM入れます。そろそろ締めで。』
CM中に台本の差し替えが届く。よし、最後の告知だ!
『CM開けます。』
「……さて、お別れの時間となりました。まさかの新番組、しかも雨東さんと一緒とは本当に驚きました。この番組自体は終わりますが、また再来週には番組名と時間を変えて、皆様のお耳にかかることになりましたので、引き続きよろしくお願いします。ぜひ引き続き、「早緑未亜・雨東晴西 fondly radio」も聴いて下さいね。この時間のお相手は」
「雨東晴西と」
「文明放送アナウンサー神嶋直政と」
「早緑美愛でした!では、皆様、引き続きよい夜をお過ごし下さい!……早緑美愛の冬はさみどりいろ、この番組は浜松町の文明放送をキーステーションに全国21局を結んでお送りいたしました。」
『はーいおつかれさまでした。』
私はカフを下ろす。衝撃の事実にまだ興奮が冷めやらないけど、圭司と一緒に番組が出来るなんて、本当に嬉しい!新年度がいまから待ち遠しいよ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます