第262話○いろはと渋谷バラードの聖地巡礼ロケ後半戦!
「神泉駅まで来たわけだけど、ここからは残り2曲の舞台だね。」
「ということは次は井の頭通りだね!」
「そのとおり!ここからは少し歩くけど美愛は大丈夫かな?」
「大丈夫だよ!今日はそれでちゃんとスニーカーにしてきたからね!」
ここからは実はけっこう人通りの多いところを歩くことになるので、警察の方も同行してくださることになっている。胸元に付けているマイクを指向性の強いものに変え、警察の方が合流したのでいよいよ撮影再開。
「そこの通りが東鉄百貨店本店につながるカルチュアビレッジ通りだよ。横断歩道を渡って右に曲がってね。」
「あっ、ここもカルチュアビレッジ通りなんだね。いちきゅうのところからここまで伸びているんだね。」
「渋谷のメインストリートの一つだよね。」
「いつも人が一杯ですごいけど、今日は平日の午前中だからか割と空いているね。」
「左手に見えてきたのが東鉄百貨店だね。」
「ここも何度か来たことがあるよ!」
「東鉄本店の前にある横断歩道を渡って右の方へ進むよ。」
「りょーかい!」
横断歩道を渡り、右に曲がって、すぐの所にある路地へ入る。もちろんカメラはずっと回っているので彩春と雑談を続けながら先へ進む。さすがに周りに人も多いからきっとこの辺はカットされるんだろうなあ。しばらく進むと交番が見えてきた。
「ということでたどり着いたよ。」
「おお!交番だね!」
「そう!ここが、『井の頭通りで雨に濡れて』に出てくる交番だよ!」
「先が少しとがっているんだね。」
「そうなんだ。この交番の建物を上から眺めたのがこの写真!」
そういうと彩春は横からスタッフさんが出してきたフィリップを受け取って掲げる。
「あっ!涙みたいな形をしている!」
「ご名答!だから『井の頭通りで雨に濡れて』で『雨に濡れた宇田川町の交番 こんな時に私の目からあふれないで』っていう歌詞になる訳なんだ。」
「彩春すごいね!」
「すごいでしょ!全部、大渡さんの受け売りだけどね!」
「なんだー!彩春がすごいんだと思ったのに!」
もちろん、このやりとりはほぼ台本通りだよ!
さっき、円山町にいたロケバスが、いつの間にか宇田川通り交番の脇にある一時駐車スペースにやってきた。入り口の所に「駐車許可」と付けてあるのでここに一時駐車する許可を取ってあるんだね。こういうロケも本当に大変だなあ。
ロケバスに乗り込んでお化粧を直してもらいつつ、彩春と並んでしばし休憩する。通常モードならこれくらいの距離を歩くのは全然苦にならないんだけど、さみあんモードになった状態、さらには周囲にたくさん人がいる状況で歩くのはけっこう疲れるね。でも、あともう少しでロケも終わりだから頑張ろう!
「収録再開しまーす。5、4、3。」
「……さて、このあとはもう判るよね?」
「『宇田川町裏通り』だね!」
「正解!交番から左に入った路地が舞台なんだ。こっちだよ。」
彩春の前にいるスタッフさんの誘導で路地を進む。
「この路地ずいぶんと狭いね。」
「実はこの路地、昔は宇田川っていう川だったんだ。」
「そうなの!?」
「実はね。それで、川を有効活用するために川については暗渠化っていって、下水道ということにして、上をふさいで道路にしたの。」
「そんな歴史があったんだね。」
「もっと昔はこの辺は田園地帯で、緑が一杯だったんだって。それで出来た曲が小学校で習う『春の小川』っていう曲なんだよ。」
「『春の小川』ってここが舞台なの!?」
「実際には宇田川の上流、
「代々幡町って、渋谷アリーナの近くだよね。」
「そうそう!原宿公園の隣町だよ。」
「すごいなあ。そんな歴史のあるところで今度ライブをするなんてなんか面白い。」
「そういえば!美愛すごいよね。」
「えへへー、ありがとう!」
「っと話している間に着いたね。ここが『宇田川町裏通り』の舞台だよ。」
交差点の先に続く道路の一番右が左側と比べて一段低くなっている不思議な形態をしている。
「あっ!『段差のある道 まるであなたと私のようね』って、これだね!」
「さすが歌っているだけあるね!」
「そっか、本当にこんな段差があるんだね。」
「これも暗渠化したのが理由みたいだよ。」
「なるほどねー。」
「そうしたらラスト一カ所だね。」
「えっ、まだ行くの?」
「そりゃ、もちろん!今度出る5thアルバムに収録される5曲目の渋谷バラードの舞台へ行くよ!」
「そうか!曲目が公表されたから!」
「そういうこと!じゃあ、ラスト!」
交差点を左に曲がるとさっき前を通った東鉄百貨店の本店がまた見えてきた。建物沿いに右へ回り込むと先ほど歩いてきた道を戻る感じになる。
「また戻る感じなんだね。」
「そだよー!途中までは戻るルートだね。」
「なるほどね。」
さっきこの通りに出てきた路地の少し手前にある六叉路を右斜め前に入ると急に高級そうなマンションになる。木々もなんか増えた感じだ。
「なんか、急に家が立派になって、木が増えたね。」
「ここが渋谷の奥にある高級住宅街、
「あっ!ここが松濤なんだね!っていうことはこの先にあるのって。」
「着いたら種明かしをするから待っててね!」
「判った!」
しばらく進むと右手に公園の入り口が見えてきた。やっぱりね!
「はい!つきました!」
「ここが『松濤桜公園』だね!」
「そうだよ!正確には松濤龍造寺公園っていうんだけど、桜の名所として知られている公園なんだ。」
「そうか、それで『松濤桜公園』なんだね。」
「ブラジリアさんのご協力により、なんとここで、『松濤桜公園』をテレビ初オンエアしちゃいます!それを聴きながら今日の街歩きを振り返りたいと思います。美愛、今日はどうだった?」
「うん、なんか自分で歌っている曲の舞台をこんな感じで訪問出来てすごい楽しかった!歌うときに今日見た情景を思い出しながら歌おうと思う!」
「私も改めて聖地巡礼したけど、やっぱり歌の舞台をこうやって実際に巡るのは楽しいね。」
「本当だねー。」
「雨東さんと一緒に来てもいいかもよ!」
「そっか!デートで来てもいいね!」
「二人は本当にラブラブだから楽しい一日になると思うよ。」
「そうだね!今度聞いてみよう!」
この辺も台本に書かれているんだよ!のろけじゃないよ!
「皆さんもぜひ美愛の渋谷バラードを聴きながら、渋谷の街歩き、してみてくださいね!」
「では今回の街歩きはお開きとしたいと思います。」
「今日の仲良し二人組は、岡里いろはと」
「早緑美愛でした!今日も」
「「仲良しふたりで街歩き!」」
「……カット!お疲れ様でした!」
「「お疲れ様でした!」」
よし、最後もちゃんと決まった!オンエアが楽しみだ!
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