第254話○早緑美愛公式チャンネル定期配信第四回前半戦
まだBSの番組が始まっていないのに反響がすごいそうだ。定期配信の前に皆さんで打ち合わせをした所によるとこんな傾向になっている。
いろは・つむぎ→バーチャル関係のコラボやイベント、つむぎが引退前にやっていた企業案件
へべす→リアルのトーク番組やバラエティ番組への出演依頼
私→バーチャルライブや配信のゲスト
そして、3人の共演依頼は、いろはとへべすにはそれぞれ来ているのに私の所にはあまり来ていないそうで、どうも紅白出場歌手ということで単体指名となっている、という分析結果を教えてもらった。紅白の影響というのはバーチャルの世界にまで及ぶんだなあ、すごい。
皆さんとの打ち合わせが終わったあと、いったん太田さんのデスクへ立ち寄って新しいウイッグを受け取ったあと、旅行バッグを持ったまま、更衣室へ向かう。今日は春の番組改編時期にジャパンテレビで放送するクイズ特番のレポーターとして、九十九里海岸で宿泊ロケをしてからロケバスで事務所へ送ってもらったから、既にさみあんモードになっているんだけど、全身砂埃をかぶったから一度シャワーを浴びて、ウイッグを交換したかったんだよね。もちろん収録はテレビ局で用意してもらった衣装を着ていたんだけど、私服もけっこう砂をかぶったのは誤算だったなあ。予備の私服を用意しておいてよかったよ。
あらためてさみあんモードに整え直して更衣室を出るとこはくちゃんからRINEが来ていた。
虹色こはく{Web先行で有明公演最終日のチケット取れたよ!楽しみにしてる!]
こはくちゃん、無事にチケット取れたのか!よかったー!嬉しい報告にほっこりしながら、太田さんのデスクへ戻る。時間がちょっと中途半端なので少し雑談の時間となる。
「バーチャルの方でも紅白の実績が生きてくるとまではさすがに予想はしてなかったけどね。」
「ビックリしました。」
「仕事の幅が広がればとは思っていたけど、あなたたちにとって、これは大きな転機になるかもね。」
「は、はい!がんばります!」
「まあ、あまり気負わなくていいわよ。」
「そうはいっても。」
「美愛はいままでのようにまっすぐ進んでくれればいいの。進みたい道の整備は私と華菜恵がするんだから。」
「私もがんばりますよ!」
「お願いします!」
「あと、先生には昨日話しておいたけど、スケジュールをいろいろと調整して、渋アリのこけら落とし公演が終わったあと、29日から31日まで完全なオフにしたからゆっくり休んでね。」
「えっ、そこでおやすみいただけるんですね!?」
「元々ここでテレ有さんの『日本の街角から』っていう紀行番組のロケが2泊3日で入っていたんだけど、なんかロケ先の都合で今回は企画自体が見送りになっちゃったのよ。いまから仕事を入れるのもなかなか難しいし、それならこのところスケジュールが詰まって休みが入れられていなかったからまるまるオフにしちゃおうって思ったの。」
「ありがとうございます。ゆっくり休ませてもらいます。」
「うん、そうして。大学始まったらまたスケジュールがいろいろ入って忙しくなるからね。」
「はい!」
「おはようございます!」
ノックのあと、何やら人がやってきた。圭司は昨日事務所で打ち合わせをしたあと、今日も引き続き、家で新作のプロットを詰めているので、スタジオには来ていない。だから今日の配信は私一人だと聞いていたのだけど!?
「あれ!?瑠乃!?」
「美愛、よろしくー!」
「今日は急遽、瑠乃も出演。実は、明日から瑠乃の公式チャンネルが開設されることになったの。その宣伝もかねて、ね。」
「えっ!すごい!おめでとう!」
「ありがとう!」
「そうしたら台本の読み合わせをしましょうか。」
「「はい!」」
20階まで上がり、2001会議室で読み合わせをして、仕出し弁当を二人で食べてから瑠乃と一緒にスタジオへ入る。
「配信入ります、5秒前、4、3……。」
「……20時になりました!みんな!こんばんは!早緑美愛だよ!今日はライブの物販情報をお知らせするよ!その前にまずはゲストを紹介するね!2月7日にアイドルデビューした柊瑠乃さん!」
「はじめまして、柊瑠乃です!よろしくお願いします!」
「実は瑠乃とはマネージャが一緒なんだ。一緒にレッスンとかもしたよね。」
「はい!」
「それで、瑠乃とはもう何度も会っていて、けっこうラフな感じでやりとりしてるんだ。今日はよろしくね!」
「こちらこそお願いします!」
「あっ、いつも通りラフな感じで!」
「ありがとう!」
「それじゃあ、まずはライブチケットの話をしちゃおうか。先行販売もついに今日ラストになるWeb先行の当落発表があったんだけど、すべての先行を通して、ビックリするくらいの申し込みがあったみたいで、本当にみんなありがとう!」
「すごいよね。」
「ファンのみんなのおかげだから本当にありがたいよー。みんなが見たいと思ってくれているっていうことだから。」
「うん、私も見たいもの。」
「ありがとう、当日はいろいろなことを考えているのだけど、今回もまたVTRにまとめてあるのでこちらをどうぞ!」
いつものように大崎エンタテインメントで作ってくれたビデオが流れる。3日間それぞれロック・ポップ・バラードをテーマに違う楽曲となることや追加公演では途中にバーチャルライバーとしての私のステージも組み込まれることが解説される。
「VTRを見ていただきました!けっこう盛りだくさんなんだよね。実はまだリハが始まっていなくて、明日から本格的にスタートなので、まだどんな感じになるのか実感がわかないんだ。」
「三日間、全部曲が違う上に追加公演はバーチャルライバーとしてのステージまであるなんてすごいよね。」
「なんか渋谷のシアターアリーナって、バーチャルライバーのライブも出来るような舞台装置になっているみたい。」
「そうなんだ!?すごいね。」
運営コメント〈最新鋭の機材が入っています!〉
「あっ、運営コメント。そうなんですねー。前回見ていなかった人もいるかもなので説明しておくと運営コメントは私のマネージャさんがやってます。雨東さんのマネージャで、さっきもいったとおり瑠乃のマネージャでもあるよね。」
「うん、お世話になっています。」
「最新鋭っていうことは今後はバーチャルライブとかもきっといろいろと開催されるんだろうね。」
「へべすとかつむぎとかも出演出来る感じだね。」
「そうだね!大崎に所属しているバーチャルライバー大集合とか面白そう。」
「それは絶対楽しいね。へべすがいろいろ頑張って考えそう。」
「へべすは本当に次から次へといろいろなアイデア出してくるもんね。」
「アイデアパーソンだよね。見習いたい!」
「どうやって考えているのか一度聞いてみたいよね。」
「みんなで突っ込む配信!」
「それもいいね!いろはあたりに仕切ってもらうといいかも。今度話してみよう。」
「そうしよう!」
運営コメント〈ここでライブに関する大事なお知らせを映像で流します!〉
「えっ!台本にないんですけど!?あっ、流すんですね。どうぞ!」
えっ、なに?なに?なんの映像が流れるの!?
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