第246話○彩春の実家とこれから
「よし、OKきた!」
紗和と一緒にもう一回大浴場の露天に入りに行って、戻ってきたら朋夏が突然大きな声を上げた。
「朋夏、どうしたの?」
「うん、せっかく赤梅ちゃんたちがいるからコラボでラジオ配信をしたいなって思ったんだよね。それで、うちのマネージャと彩春のマネージャ、未亜と瑠乃のマネージャにTlackでDMして確認取ってたの。三人からOKもらったよ!」
「朋夏、それいいね!」
「うん、へべす、ナイスアイデアだよ。機材は私の実家の部屋から持ってくるね。」
「赤梅ちゃんたちがOKならコラボ配信しよう!」
「うちはOKですよ。」
「みなさん、ボイスチェンジャーとか使っていないんですね。」
「私はもともと声優だったので声を変えています!」
「クリスちゃんの声になった!」
「私は一時期ボイストレーナーも兼任していたので、ンンッこんな感じです。」
「赤天使さんの生ボイス!やばい!泣きそう!」
「秋桜ちゃん、私たちも大丈夫だよね?」
「うん!」
こはくさんも秋桜さんも声が全然違う!4人ともボイスチェンジャー通していないのにすごい!
「そうだ。私の部屋から機材持ってくるけど、タワー型のデスクトップパソコンだから誰か手伝って欲しい。」
「それなら、こーちゃん行ってきたら!あこがれのにしつむ配信部屋だよ!」
「あっ!そうか!あの配信部屋か!彩春さん、いいかな?」
「もっちろーん!そうだね、実写時代から見てる幸大くんは私の部屋来たら懐かしいかも!」
「小物類は私も手伝おうか?」
「あっ、未亜も来てくれるの?ありがとうー!へべすは机を用意したりしておいてね。いつもみたいな感じで配置するから。」
大部屋を出て、三人で彩春の部屋まで階段を降りていく。
「ドキドキだよ!」
「普通の自室だけどね。」
「それでも、だよね。私も一人暮らししてた圭司の部屋に入ったときに『ここで!』って嬉しかったもの。」
「……たまにみんながうらやましくなることもあるんだよねー。」
「彩春?」
「私はそこまではまっている作品とか応援している人とかは特にいないから。」
「なるほどなあ。でも彩春さん、ドルプロは熱心なプロデューサーさんじゃない!」
「あっ、そっか!私もそういうのがあった!」
「彩春の推しは真瑚ちゃんだけなの?」
「ほかに担当しているアイドルが二人いるんだけど両方とも声がまだなんだよね。」
「そうなんだ!」
「
「なるほどね。早く声がつくといいね。」
「本当だよー!」
話で盛り上がりながら階段を降りきると玄関のようなドアがあった。
「ここからがプライベートスペースだから玄関になっているの。鍵開けるね。」
彩春はそういうとドアを解錠して開けてくれる。彩春の案内で廊下を進むと右に曲がってすぐの左手が彩春の自室のようだ。
「家族以外で実家の私の部屋に入ったのは朋夏だけかな。オフコラボは基本的に外だからね。」
幸大くんが目を輝かせて部屋の中を見ている。
「あっ、あの本棚!」
「さすが!そう、実写の時はあの本棚にカメラ向けて配信していたの。ベッドがドアの反対側だから実際にはそこしかなかったんだけど、窓の反対側だから外から日が差しても逆光にならなくてちょうど良かったんだよね。」
「なるほどなあ。」
「地下って聞いていたけど、確かに窓があるね。」
「斜面に建てたからこの部屋までは窓があるんだ。」
「そういうことか!」
「彩春さんの部屋、ずいぶん荷物少なめだね。」
「うん、盛岡で一人暮らしするときにだいぶ持っていったから本当に最低限だけ置いてある感じかな。まあ、5月の連休までにこの部屋を明け渡すから道路に雪がなくなったら早々にも荷物を引き上げるんだ。それで昨日も荷物の整理をしていたの。」
「えっ!?そうなの!?」
「うん、今年の秋に兄貴がドイツから帰ってくるの。フランスで料理人の修行をして、そのあとドイツで本場のペンション経営を学んでいたんだけど、両親も年を取ってきたから、そろそろ継ぐっていっていてね。」
「そうなんだ!」
「それで、6月からこの部屋を半分に区切る工事をして、甥と姪の部屋にするんだ。」
「なるほどなあ。」
「ちょっと寂しいけど、まあ、私はこのまま東京で生活することにしているからこのペンションを継いでくれる兄貴たちを優先するのは当たり前だよね。」
彩春もいろいろと思うところはあるのだろうけど、やっぱりこればかりは仕方ないよね。
「なんかちょっと湿っぽくなっちゃったね。そうしたら機材を持っていこうか!」
「これだけで大丈夫?」
「うん。」
「こんな高そうなタワーPCを置きっぱなしなんてすごいなあ。」
「それは、実家から朋夏と配信することがけっこうあったから置きっぱなしにしていたんだよね。Vになったあとに組んだ初代配信機で中身はだいぶ古くなっているけど、思い入れもあるから。」
「これも東京に持っていくの?」
「そのつもりだよ。」
「部屋、狭くなっちゃうね。」
「いや、それほどでもないよ。一回引退したタイミングで配信部屋を片付けてだいぶ荷物を処分したから、空きスペースはけっこうあるんだ。」
「なるほどね。」
「いまはまだリアル配信だけだけど、朋夏の番組が始まったら自宅でもまたつむぎを稼働させるから、機材も整えないと。」
「大変だね。」
「全然大変じゃないよ。ひょんなきっかけとはいえ、むしろ嬉しいかな。一応割り切ってVやめたけど、やっぱりこころのこりはあったから。」
「そか!」
機材を持って部屋まで戻るとすっかり準備は完了していた。
「配信はどこのチャンネルでするの?」
「あっ、それはうちでやるよ。それで私から出演料をみんなに回す感じで大崎の方はOK取ってあるんだ。赤梅ちゃんの方もいまそれでOKもらったから。」
「へべす、さすがだね。」
「まあね!あっ!そうだ!紗和と明貴子、圭司くん、あと慧一は、いること自体は触れてもいいよね?」
「うん。」
「いいよー。」
「問題ないな。」
「おっけー。」
「幸大くんと紅葉、志満、華菜恵はどうしよう?」
「私は名前出されても誰も知らないからねー。」
「私も一般ぴーぽーだから!」
「俺たちもやめておいた方がいいよな?」
「うん、担当さんに知られると……。」
「あっ、それは私も人のこと……。」
「しーちゃんは、アシスタントさんだから責任ないよ!私がえーちゃんとかにまかせてきちゃっただけだから!」
「じゃあ、四人には触れないね。よし、準備が出来たらTwinsterでみんな告知して、はじめよう!」
突発配信、楽しみだなあ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます