第241話○少し早めに彩春の実家へ戻ったら!?

 圭司もかなり上手く滑ることが出来るようになって、最後の一本は私と同じくらいの速度で本当に一緒に滑ってこられた。最愛のフィアンセとこんな感じで一緒に楽しめるなんて嬉しいなあ。圭司、そしてみんなとの出会いに感謝だよね!

 一気にナイターモードとなりつつある中央ゲレンデを降りると時間はちょうど16時になっている。邪魔にならないところによけてウェアのポシェットからスマホを取り出すと彩春から楽曲検討のTlackにメッセージが来ていた。


 岡里いろは 15:58

 私は久しぶりのスノボでちょっと疲れちゃったから一足先に戻るね。16時半くらいに迎えに来てもらうように話してあるから一緒に戻りたい人がいたら先着7名様まで!ナイターで滑る人はそのまま滑っていていいよ。


「圭司はこのままナイターでも滑る?」

「うーん、そうだなあ。未亜が滑るなら一緒に行こうかな。」

「私は朝からずっとロングランで滑っていて、だいぶ疲れた感じがするから彩春と一緒に戻ろうかな。」

「じゃあ、俺もそうしよう。実は、慣れないことしたせいかけっこう足が痛んだ。」

「あー、判る。私もいまそんな感じ。スキーって普段は使わない筋肉使うみたいなんだよねー。」


 板を抱えてそのまま昨日待ち合わせをした案内板のあたりまで行くと彩春のほかに朋夏、そしてランチの時に声を掛けてきた4人がいた。なるほど、それで先着8人なんだね。


「あっ、未亜と圭司くんお疲れー。」

「俺たちも戻ることにしたよ。」

「みんなの紹介はまたあとでさせてね。」

「うん、了解。」


 向こうの4人組も頷いている。お互い訳ありなのは察しているんだね。


「まにあった!」

「あれ?華菜恵も戻るの?」

「うん、久しぶりにコブを攻めたら疲れちゃって。」

「判る!私も久しぶりにスキーしたらけっこう疲れた!」

「だよねー。戻ってゆっくり温泉に浸かって、身体をほぐしたいよー。」


 彩春と朋夏は向こうの4人と熱心に話をしている。うん、二人と親しいんだからこれは間違いなくVTuberさんたちだね。華菜恵が来てすぐにマイクロバスがやってきた。すぐに板を入れて、そのまま乗り込む。あっという間にペンションまで戻ってきた。4人組はチェックインをしないといけないので、ロビーのソファーでしばし待機する。

 5分くらいしてチェックインが終わったみたいで、二人が薫さんと呼んでいる方だけがこちらへやってきた。


「お待たせしました。チェックイン終わりましたよ。」

「薫さんたちはどの部屋ですか?」

「私たちは2Aと2Cですね。」

「あっ、隣ですね。ディナーは何時からですか?」

「今日は20時からにしてあります。」

「そこも私たちと同じですね。そうしたらその前にうちの部屋で雑談でもしませんか?みんなお風呂入ったりしたいと思うから19時に2Sに来て欲しいです。圭司くんもそれでどう?」

「うん、了解。」

「じゃあ、またあとでね。」


 部屋に入って普通の服に着替えなんかを済ませ、せっかくだからと4人で一緒に部屋のお風呂を堪能していたらあっという間に19時。チャイムが鳴ったので彩春がドアを開けに行く。


「どうぞ、はいってください。」

「お邪魔します。」


 そのあと、すぐに圭司もやってきて、9人で車座になる。彩春が昨日買ってきてくれた飲み物を持ってきたので、それを回していると彩春が口火を切った。


「そうしたら確認なんだけど、みんな薄々気がついているとおり、それぞれいろいろやっている人たちが集まっているの。まず、何をしている人か紹介し合っても問題ないか、所属事務所にそれぞれ確認した上で、私が一人ずつ紹介していくっていうことでいいかな?」


 みんなそれに同意をして、担当マネージャに連絡を取ろうとしたところ、華菜恵が私と圭司に話しかけてきた。


「ほかのメンバーも含めて、私がまとめて確認しちゃうね。」

「あっ、そうか。うん、お願い。」

「ありがとう、よろしく。」

「りょーかい!うちが一番人数多いからねー。」

「そうか、私もまとめて確認しちゃうよ。」

「彩春がそうするなら私も!」


 みんなまとめてそれぞれのマネージャに確認する。


「あっ、もう返事が来た。二人とかに見せていいって書いてあるから見せちゃうね。こんな感じ。」


 沼舘華菜恵 19:05

 岡里さんの実家に岡里さんの知り合いが来ていて、どうやらタレントさんのようです。日向夏さんとも親しいのでライバー仲間ではないかと思われます。お互いに紹介したいと岡里さんがおっしゃってくださっていますが、全員問題ないでしょうか?

 太田庸子 19:08

 岡里さんと日向夏さんが知り合いなら関係性とかも含めて教えちゃって全然問題ないわよー!そこからお仕事が広がるかもしれないからね!特に美愛と雨東先生はこれからバーチャルライバーデビューだからそっちのつながりは重要。

 あとは任せるから本人たちの了承は必ず取ってね。相手が誰だったかとかは木曜日に出社したときにでも詳細教えてくれればいいわよ。あっ、私がマネージメントしているみんなにはこの画面見せちゃってOK。

 沼舘華菜恵 19:09

 判りました!


「うん、問題ないね。」

「私も問題なし。」

「いろはっち!こっちは問題ないよ!」

「うちも問題なしだね。朋夏の所は?」

「私もOK。彼もOK。」

「薫さんのところは?」

「私たちの方は聞かなくても大丈夫ですから。」

「知ってたけど、一応ね。紹介したあとはいつも呼び慣れている呼び方で呼ぶ感じで。私とへべすは紹介する必要ないと思うから、私の右隣から紹介していくね。彼女はアイドルシンガーの早緑美愛。その隣が作家の雨東晴西。さらに隣が二人のマネージャのサポートをしている沼舘華菜恵。それで、朋夏の隣がVの銀杏いちょう秋桜こすもす、同じくVの織田おだクリス、虹色にじいろこはく、華菜恵の隣が赤梅あかうめエンジェル。」

「えっ!赤天使あかてんしさん!?」


 華菜恵が見事に固まった。


「あっ、そうか、華菜恵。」

「私の呼び名を知っているって、もしかして?」

「……はい!うめエキスです!まさかまさかお目にかかれるなんて……。」

「そんなに感動していただけると光栄ですね。」


 そういうと赤梅さんは右手を差し出す。華菜恵は一瞬なにが起きたのか判らずに固まっていたけど、すぐに再起動して、号泣しながら握手をしていた。圭司と場所を変わって、華菜恵の背中をさする。しばらくさすっていたら少し落ち着いたみたい。


「華菜恵さん、そんなにすごいファンだったんだね。」

「うん……。配管工カーレースの実況配信がすごい楽しくて、それからずっと追いかけていたから……。」

「えっ、配管工カーレースって本当に初期の頃に一時期やっていただけなんですけど……。」

「はい、私が見たのは自己紹介動画が上がって間もない頃でした……。」

「そんな前から応援してくれていたんですね。ありがとうございます。」

「赤梅ちゃん、良かったね。」

「うん、かなり嬉しいものなんですね。」

「私たちはリアルでファンのみんなと接点持つって無理だもんね。」

「こればかりはバーチャルライバーの宿命ですよね。」

「あの!わたしもいいですか!」


 織田クリスさんが突然手を挙げた。なんだろう?

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